弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年3月24日

国際宇宙ステーションとはなにか

宇宙

著者 若田 光一、 出版 講談社ブルーブックス

 国際宇宙ステーションに初めての日本人宇宙飛行士として搭乗した著者の体験をまじえた解説書です。宇宙ステーションというので、地球からはるか彼方にあるのかと思っていましたが、なんていうことはありません。地球のすぐ近くをぐるぐる回っているのですね。
 近すぎて丸い地球の全貌もみることはできないそうです。なーんだ、と思わずつぶやいてしまいましたが、それでも、この本を読むと、宇宙飛行士って大変な仕事なんだなと思いました。なにしろ、狭い狭いスペースで、下手をすると何か月も生活するのですからね。
 トイレも大変です。そして、運動不足解消のために身体を動かしても、好きにシャワーを浴びるなんてことはできません。水は宇宙ではとても貴重品なのです。
 国際宇宙ステーション(ISS)は、1998年11月に建設が始まり、2000年10月末から宇宙飛行士が2~3人ずつ交代で数ヶ月ずつ暮らしている。
 ISSは、地球の周りを90分で一周し、日の出と日の入りが45分ごとに訪れる。
 ISSの中では、毎日、レントゲン写真を数回取られるほどの放射線を被曝する。
 ロシアは、ソ連時代から抜本的なコンセプトの変更はせず、職人芸的な地道な細かい改良を加えていくことで、信頼性の高い確立された宇宙往還システムを作り上げた。
 ロシアの宇宙船ソユーズは3人乗りである。その利点は、システムがシンプルで、信頼性が高く、6か月以上もISSに係留することが可能なため、緊急帰還にも対応できることにある。これに対して、アメリカのスペースシャトルは7人乗りだし、20人の貨物も運べる。
ソユーズ宇宙船は、1回1回が使い捨て。スペースシャトルは再利用される部分が多い。ところが、使い捨ての方がロスが大きいかというと、必ずしもそうとは言えない。事業として長く続くためには、製品を新しく作り替えながら量産していくという形が望ましいのと同じである。
 ソユーズは、宇宙飛行士の立場から言うと、運用性に関して、非常に洗練されている。自働が多く、何より、安全第一となっている。それもあって、ロシア語の習得は宇宙飛行士には必須となっている。宇宙飛行士の基礎訓練1500時間のうち、英語とロシア語に200時間ずつ割いている。4分の1が語学訓練である。語学は、宇宙飛行士にとってそれほど重要視されている。
 宇宙にいると、地上の骨粗しょう症の10倍の速さで骨量が血中に溶け出す。宇宙では毎日、2時間の運動をしていても、2割は筋肉が衰えてしまう。
 ISSのなかの酸素は、水を電気分解して作りだす。水素の方は機外に出してしまう。
 ISSに必要な水の大半は、地上からプログレス補給船で運んでいる。年間6800キログラムになる。運搬費に換算すると、コップ1杯の水が30~40万円になる。うへーっ、こりゃあ高い水ですね。
 そこで、尿を蒸留して水に変え、空気中の湿度を除湿した水や使用済みの水と一緒にろ過・浄化処理して飲料水として再使用するシステムがすすめられている。うむむ、気にしなければいいのですかね……。昔はやった健康法に、朝一番の自分の尿をコップ一杯飲むというのがありました。さすがに私にはできませんでした。
 ISSのトイレはロシア製。アメリカは1900万ドル出して、ロシア製トイレシステムを購入した。コストや信頼性を運用実績に照らして検討した結果のこと。
 宇宙飛行士は、アメリカ100人、ロシア40人、日本8人、ヨーロッパ10人、カナダ6人となっている。
 宇宙飛行士は、こわがりのほうが良い。怖さを知らない人は逆に危険だ。
 宇宙飛行の訓練は、その多くが不具合対策である。
 操縦・航法・交信という作業の優先度を常に意識し、全体像を把握しながら先を読み、的確に運用作業をこなす。これがすべての基本だ。
 宇宙飛行士って、大変な仕事だとつくづく思いました。
 庭にシャガの白い花が咲いています。緑にフリルのついた、すがすがしさを感じさせる純白の花です。日比谷公園にもたくさん見かけます。どんどんはびこっていく生命力旺盛な花です。
 ハナズオウの花も咲いています。赤味の濃いピンクの米粒が枝にびっしりまとわりついたような可愛らしい花です。チューリップは200本になりました。4割ほどが咲いています。
(2009年2月刊。940円+税)

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