弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年3月19日

新聞販売の闇と戦う

社会

著者 真村 久三・江上 武幸、 出版 花伝社

 私のごく親しい弁護士が、天下の読売新聞とたたかった経過をまとめた本です。インテリがつくってヤクザが売る。こんな言い方が公然とされているのが新聞業界です。とりわけ公称1000万部を誇る日本一発行部数の多い読売新聞には悪名高い拡販団がいます。脅迫まがいのおしつけ拡販団として広く知られました。
 著者は、筑後地方で販売店を営んでいました。前任者から引き継いだとき1500人いた読者が、2年後には1200人を切っていた。
 新聞の購読契約は、6か月、1年、2年、3年という種類がある。契約期間が短いので、満期の前に更新してもらうが、新しい読者を獲得しない限り、あっという間に読者が減ってしまう。絶えず営業していないと、部数が激減してしまう。部数を維持するために、自転車操業のような状態に置かれている。
 そして、読売新聞は、たとえば1000部しか配達しない販売店に1500部を搬入し、その卸代金を徴収する。差の500部が、いわゆる「押し紙」である。この「押し紙」のない販売店はない。
 拡販セールス団の派遣は、販売店の店主の集まりである「読売200会」で決められる。
 読売新聞にたてつくと、新聞配達員に尾行がつく。新聞をどこに配達しているのか、販売店の差し出す名簿に頼らずに把握しようというわけである。新聞社が販売店に読者一覧表の提出を求めるのは、強制改廃の前触れと考えてよい。
 裁判所に対して仮処分を申請し、販売店であることの地位保全を求めて認められたのです。さらに本訴でも勝ち進みました。販売店の解任を非とし、300万円もの慰謝料支払いまで福岡高裁は命じました。
 福岡地裁は、店主としての地位を保全すると同時に、読売新聞に対して新聞の供給を再開するように命じました。そして裁判所は、裁判所の命令に大胆不敵にも従わないことを知ると、1日につき3万円の「罰金」(間接強制)を支払うよう読売新聞に命じたのです。
 天下の読売新聞といえども法の無視は許されません。立ちあがった販売店の経営者の勇気に拍手を送りたいと思います。また、江上弁護士に対しては、コンパクトな本でわかりやすくまとめてくれたことにお礼を申し上げます。

(2009年2月刊。1500円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー