弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年3月17日

橋下「大阪改革」の正体

社会

著者 一ノ宮 美成、 出版 講談社

 ひとの悪口を言うのは私もあまり好きではありません。しかし、この橋下大阪府知事については、まあ石原東京都知事も同じですが、あまりのえげつなさに我慢ならず、悪口くらい言わせてもらいたい、そんな気分です。
 といっても、これは書評ですので、この本に書かれていることを紹介します。ほとんど、そうだそうだと手を叩き、足をふみならしたくなるような話が満載です。いやあ、その正体はひどいものです。そんな橋下知事を依然としてマスコミが高く持ち上げているため、大阪府民の支持率は高どまりだというのです。いやはや、まったく罪つくりなマスコミです。これは小泉「改革」とまったく同じ構図ではありませんか。
 橋下弁護士はサラ金「シティズ」の代理人弁護士を務めていた。「シティズ」というのは高利を強引に取り立てることで有名な会社です。橋下弁護士は、また、徴兵制の復活を主張し、日本は核武装すべきだといい、「税金を払わない奴は生きる資格がない」とウソぶきました。
 テレビの出演料は、ローカル局で1時間50万円、ネット局だと100万円以上。講演料も1時間150万円、年収3億円。こんな大金持ちが貧乏人は死ねと言っているのですから、まったく許せません。
 橋下弁護士は府知事選挙出馬を「2万パーセントない」と否定しながら、その直後に出馬を表明した。出馬を否定したのは、番組キャンセルにともなって違約金が発生するのを恐れたからだ。そんな解説がなされています。せこい男ですね、まったく。年収3億円の金持ちというのに、呆れます。
 「大阪府は破産会社」と橋下府知事は何回も言ったが、これは事実に反している。
 嘘も百回言えば本当になる。こんなデマゴギーをマスコミ受けするように繰り返しただけのこと。いやあ、ひどいものです。許せない、プンプン。
 橋下知事の支持率が6割以上というように高いのは、常に敵を作る手法にたけているから。小泉元首相は郵政族を的にしたが、橋下知事は公務員労組を敵にした。それで世間の注目を集め、支持をかすめ取ろうとしたわけだ。いま、日本社会に蔓延している社会の閉塞感から、その不満のはけ口が公務員に向かっている。
橋下知事は、高校生に対して次のように強弁した。
 「義務教育は中学まで。自分で勉強して公立に合格するしかない。今の日本は自己責任が原則。それがいやだったら、国を変えるか、日本から出るしかない」
 ひどいものです。高校生に向かって、いやだったら日本から出て行けというなんて、とんでもない暴言じゃありませんか。いったい、橋下知事って、日本の王様なんですか。
 橋下弁護士を知る大阪の某弁護士は、橋下知事について次のように語る。
 「ひと言で言うと幼稚ですわ。メディアが、まるで大阪の救世主であるかのように持ち上げるため、少しでも批判すると橋下知事はキレるし、世間のバッシングにあう。そこで、誰もが口を閉じるしかない。いまの大阪では、橋下知事とメディアが共演して恐怖政治がつくられている」
 橋下知事について、情緒的な発達が11歳か12歳くらいで終わっている幼い人だと断言した人がいます。ふむふむ、まったく、そのとおりなんじゃありませんか。
 橋下知事には、庶民の目線というのがまったく感じられない。今日の財政危機を作り出した張本人である関西財界が橋下知事をあやつり、その橋下知事が熟知したメディアを手のひらに躍らせることで、財界の方針を実行している。メディアは「絵になる」「字になる」などと面白おかしいだけのポピュリズム報道になり下がっている。そこには破壊だけしかない。
 横山ノックと言い橋下知事といい、本当に日本の政治家には人材がいませんよね。
 そうはいっても、国政選挙で投票率60%程度というのは、あまりにも低すぎます。政治家は国民(有権者)が育てるべきものです。
(2008年12月刊。1000円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー