弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年3月14日

ミレニアム1(上)

ヨーロッパ

著者 スティーグ・ラーソン、 出版 早川書房

 スウェーデン発の小説です。全世界で800万部も売れているとオビに書かれています。読み始めのうちはそんなに面白いのかなあ、なんて冷めた思いでしたが、途中からぐいぐいと引きずり込まれてしまいました。すごい筋立ての本です。まだ上巻ですし、ミステリー本なので、アラスジの紹介は控えておきます。オビに書かれているキャッチコピーだけ紹介します。
 孤島で起きた少女失踪事件の謎、富豪一族の闇、愛と復讐……。
そうなんです。いろんなものが絡み合って同時進行していくのです。次第に、どのシーンも目が離せなくなり、これが別の話とどう絡んでいくのだろうかと半ばの期待をかきたてられていきます。
 孤島での少女失踪事件といっても、昨日今日の話ではありません。40年も前のことなのです。そんな古い失踪事件の真相究明を主人公が頼まれて動くことになるわけですが、いくらなんでも、今さら分かるはずもありませんよね。ところが、富豪一族の内部では、親ナチと反ナチと、深刻な反目があったことも次第に判明していき、なんだか手がかりらしきものが浮かび上がってくるのです。
 今から40年前と言えば、私がちょうど大学2年生のころでした。長期のストライキに入って授業はなく、毎日、デモと集会に明け暮れていました。それでも本だけは一心不乱にいつも読んでいました。友人たちとも大いに議論をしていましたので、教室が野外にあったようなものだと今になって思います。といっても、真面目に勉強しなかったことの痛みは、今に至るまで自分の心底奥深い所にうずいています。なので、毎朝フランス語を聴いて学生気分を味わっているというわけです。
 この本は、人口900万人のスウェーデンで、なんと、3部作が合計290万部も売れたというのですから、大変なものです。ところが、残念なことに著者は50歳の若さで心筋梗塞でなくなってしまいました。第4部の原稿が200ページほどパソコンに入ったままになっているそうです。なんと……。下巻が今から楽しみです。
 それにしても、スウェーデンって、性について本当におおらかな国のようです。小説の中に出てくる話ではありますが、日本ではとても考えられないような気がするほど、大人も若者も男も女も伸び伸びと性を楽しんでいる気配です。
 庭に土筆が頭を出していました。いつもと違った場所でした。赤紫色のチューリップの花が10本になりました。毎朝、庭に出るのが楽しみです。
(2008年12月刊。1700円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー