弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年1月26日

ジャガイモのきた道

アメリカ

著者:山本 紀夫、 発行:岩波新書

 わたしたちが日常食べている「栽培植物」は、すべて人間が作り出したもの。栽培植物とは、栽培の過程で植物を人間にとって都合よく改変した結果、野生の植物とはすっかり違ったものになっている植物のこと。つまり、栽培植物とは、まさしく人間によってつくられた植物なのである。
 たとえば、種子植物は熟すと種子がパラパラ落ちたり、風に吹かれて飛ばされる。これは野生の植物にとって繁殖のために必要な性質で、種子の脱落性という。この種子の脱落性は、人間が利用するのには不都合なので、種子を利用する栽培植物ではほとんど例外なくこの性質を欠かせたものになっている。人間は収穫するときまで、種子が脱落しないものを選び出し、それをもっぱら栽培するようになったのだ。
 ふむふむ、なるほど、なるほど、そういうことですか……。
 野生のジャガイモは、ソラニンやチャコニンなどのアルカイド性の有毒物質を多量に含んでいる。そこで、アンデスの人々は、ジャガイモの毒抜き技術を開発した。
 世界各地で栽培されているジャガイモは、すべて、元をたどればアンデスで生まれたトゥベローサム種の一種に由来し、アンデスを離れてから分化したもの。
 ジャガイモの栽培化は、紀元前5000年ごろなので、その栽培化までには、最初のアンデス人がジャガイモの利用を始めてから数千年もの長い年月を要している。
 アンデスでは、穀類がまったく栽培化されなかったのに、イモ類は多種多様なものが栽培化された。ジャガイモこそ、アンデスの山岳文明を生んだ。
 人骨のタンパク質(コラーゲン)を抽出し、それを構成する主元素である炭素と窒素の量を測定し、その値から人骨の生前の食生活を復元する方法が開発されている。
 いやあ、すごいですね。骨を分析すると生前に何を食べていたか分かるなんて、すごいことです。
 苦いジャガイモは寒さに強いだけでなく、病害虫にも強い。このジャガイモを加工したチューニョは、貯蔵食品としてすぐれていて、腐らず、何年でも貯蔵が可能である。
 インカ帝国では、就職としてジャガイモ、儀礼的な作物としてトウモロコシが作られていた。トウモロコシは、酒を造るための材料だった。
 ジャガイモの耕地は休閑システムを取っていた。地力の疲弊を防ぎ、病気の発生を抑える効果もある。家畜の糞を肥料としていたのも生産性の向上に役立った。
 フランスでは、19世紀になってからジャガイモが普及した。18世紀末から19世紀半ばまでに、食事の中心は穀物のカユからジャガイモに大きく転換した。
 ジャガイモは栄養バランスに優れた作物であり、ビタミンやミネラル類にも富んでいる。あとは少しのミルクを飲むだけで、栄養は十分に補えた。
 ジャガイモは江戸時代に徐々に日本各地に広がっていった。長崎に渡来したジャガイモは日本各地に広がった。真っ先に栽培されたのは北海道地方だ。
 ジャガイモという偉大な作物について知ることができました。
 きのうの日曜日、朝からフランス語の口頭試問を受けました。まったくしどろもどろとはこのことです。大変みじめな思いをさせられました。3分前に問題を渡されます。2問(もちろん、フランス文です)あるうちから1問を選び、答えを考えて面接室に入ります。面接官は、フランス人と日本人ですが、質問と問答はフランス人がします。私は、高速道路を日本で作り続ける必要があるか、という設問を選びました。日本語ならそれなりにしゃべる自信はありますが、フランス語が全然出てこず、苦悶しました。3分間スピーチしたあと、問答するのです。冷や汗三斗とはこのことを言うのでしょう。うまく言いきれないうちに面接官が終了を宣言しました。7分間の諮問ですが、1時間もかかったほどの疲れを覚えました。
 駅への帰り道、言いたいことが言えなかったもどかしさからでしょう。自然とぶつぶつつぶやくのです。気づいた人がいたら、気の変なおじさんと間違われたと思います。
(2008年6月刊。740円+税)

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