弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年1月14日

民主党

社会

著者:伊藤 惇夫、 発行:新潮新書

 著者は民主党の事務局長を4年つとめた人です。ですから、インサイド・ストーリーとしても面白く読めます。
 民主党の「わかりづらさ」のひとつは、わずか10年の間で、めまぐるしく体制が変わっていったことにある。民主党には、旧・新・現の3つの時期がある。
細川政権の末期(94年)、自民党を離党して連立政権に参加するのにもっとも積極的であり、最後の土壇場で寝返ったのは山崎拓だった。この事実は覚えていい。うへーっ、そうだったんですか・・・。
 「旧」民主党は「ゆ党」とも呼ばれた。野(や)党でも与(よ)党でもない。その中間のゆ党だというわけだ。な、なるほどなーるほど、言い得て妙ですね。
 小沢一郎はなぜ新進党を唐突に解党したのか。それは党内の批判勢力と妥協するより、思い切って解党したうえで、自分に絶対服従を誓う信奉者を100人ほど引き連れ、梶山静六官房長官との間でひそかに進めてきた「保保」連立を実現しようとしたのだ。ふむふむ、そういうことだったのですか……。
 当事者の大多数が決して積極的に望んではいなかったのに、紆余曲折を経ながらも、1998年4月に「新」民主党が誕生した。衆議院93人、参議院38人の計131人だった。近づく参議院選挙で生き残るための選択だった。
 その直前まで小沢を「悪魔」と罵っていた野中広務・官房長官は小沢一郎に土下座した。そこで、小沢一郎は崩壊寸前の小渕政権救出に乗り出した。この時点での小沢一郎は自民党の救世主だった。このあと、野中広務は次のように言った。
「相手が同じ人間だと思わなければ、土下座くらいできる。一度、連立に取り込んでしまえば、こちらのもの。小沢とその周辺の数人以外は、やがて自民党に呑み込める」
民主党が考えるより、自民党ははるかにしたたかだった。小泉首相ブームが起き、小泉首相の派手なパフォーマンスばかりが目立つ中で、民主党はカヤの外に置かれた状態が続いた。
 菅の民主党と小沢の自由党が合併した(03年7月)。これは追い詰められた者同士が、ワラをもつかむ思いで相手に救いを求めた結果であって、決して前向きの選択とは言えない。
 民主党の議員の多くは、組織体を構成しているという意識が希薄である。民主党の代表の座は、決して居心地のいいものではない。小沢以外の4人すべて、理由はいろいろあるが、任期途中で代表の座を追われている。
 なぜ民主党代表は頻繁に交代するのか? それは民主党を構成する議員の大半が「風頼み」であり、他力本願だから。民主党には、「連合」意外に目立った支援組織がない。頼るべきは風であり、その如何は、看板(代表)が小綺麗で客を呼び込めるかどうかにかかっていると考えている。大半の民主党議員にとって、代表は「追い風発生装置」に過ぎないから、みんなで代表を守り、もりたてていこうという意識はほとんどない。ふむふむ、この詩的には納得しますよね。
 いま現在の民主党は若手中心、結党後に当選した者が多い。しかし、民主党の幹部の大半は政党変遷者である。そして、いまの民主党を動かしているのは旧党出身者である。小沢一郎は、民主党から新生党、新進党、自由党そして民主党に渡り歩いてきた。
結党から10年たった民主党の党員は4万人ちょっと。サポーターにしても22万人ほど。党員は年会費6000円、サポーターは年2000円。ただし、代表選ではサポーターは党員と同じ1票がある。
 民主党は税金でまかなわれている党だ。その131億円の収入のうち、国から貰う政党交付金は110億円。国への依存率はなんと84%。
 そして、議員1人に月65万円も支給される立法事務費がある。民主党全体では15億になる。
 なんということはない。民主党は国民の税金で成り立っているのだ。うへーっ、こんな、おかしな政党ってありませんよね。これではまるで「国立」政党ではありませんか。私は、政党交付金は直ちに廃止すべきだと思います。もちろん、企業団体も禁止すべきです。有権者一人ひとりからの献金しか政党は受け入れるべきではありません。アメリカも、基本的な考えはそうなっているでしょ。

(2008年12月刊。700円+税)

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