弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2009年1月13日
ちひろの絵のひみつ
社会
著者:ちひろ美術館、 発行:講談社
私の大好きないわさきちひろの絵がどうやって描かれているのか、その謎を少しばかり解き明かしてくれる本です。ちひろ美術館で買い求め、売店の隣の喫茶コーナーで、昼食代わりのスープをいただきながら読み始めた本です。
ちひろが主として用いたのは、透明水彩絵の具だ。透明水彩絵の具は、顔料の粒子が細かく、水を加えて薄く塗っても色が鮮やかで延びもよいのが特色。重ね塗りすると、下の色が透けて見えるという性質もあるので、一度塗ったら塗り直しが効きにくい。
ちひろの絵には、ボカシの手法が効果的によく用いられていると私は思います。
潤筆法とは、筆に水を多く含ませて、絵具をにじませる。絵の具が乾く前に別の色を置くと、色が混ざり合い、複雑な色調が得られる。たらし込みとは、たっぷりと水を含んだ筆で、たとえば茶色を薄く塗り、その色が乾かないうちに濃い茶色を置く。濃い色が薄い色に滲みこんで乾き、偶然的な色のたまりができる。
ちひろは水彩絵の具の水に溶ける特性を生かし、やわらかで清楚な、独特の色調を生み出した。絵の具が乾かないうちに筆を走らせて流れを作ったり、水気を吸いとったり、ときには意図どおりに色が広がるように画用紙を傾けたり、広がりを止めるためにドライヤーで乾かしたり、絵の具のにじみをコントロールするために、さまざまな工夫をこらしている。
ちひろは左利き(ギッチョ)なのですね。ちひろが絵を描いている写真を見て初めて知りました。ちひろは左利きだったから、右側から外光を取れるように画机を配置し、左側にはパレットや筆、筆法などの画材を並べ、中央の大きなスケッチブックの上に画用紙を広げて絵を描いた。東京のちひろ美術館には、ちひろのアトリエが一室そのまま再現されています。
混色には、パレットで色を混ぜ合わせたり、乾いてから色を重ねたりする方法もあるが、ちひろは紙の上に水分がある状態で色を重ねて、互いの色を滲み合わせることが多かった。ちひろの絵の配色に着目してみると、補色を効果的に用いた作品が多く見られる。捕食とは、紫と黄、青と橙、緑と赤のように色相環で反対側の位置にある色を言う。同系色の色同士は調和しやすいが、画面に緊張感を欠きやすい。ワンポントとして補色を加えることで、画面の印象は大きく変わってくる。
ちひろの絵は、視覚でとらえた色よりも、心で感じた色を表現することに、より重点が置かれている。とくに背景の色の選び方は大胆だ。たとえば、牧場にいる子どもたち。普通なら緑色の草原のはずなのに、ちひろは赤で描いた。そして、何ら違和感がない。
黄色い背景の中に座る少女は、黄色い背景が夏の日差しを感じさせると解説されています。ムムム、なるほど、黄色は夏の太陽光線を感じさせます。
ちひろの絵に登場してくる子どもたちの目もすごく印象的ですよね。
ちひろが描く子どもたちのほとんどにまゆ毛や白眼が描かれていない。白眼を描くと、視線の方向が限定されてしまう。眉毛を省略し、あえて黒眼だけを強調して描くことで、夢見るような子どもの無垢な表情が引き出される。
目を黒く平板に描くだけでは、マンガのキャラクターのようになってしまう。ちひろは子どもたちの心の動きに合わせて、それぞれに眼の色の濃さを変えたり、目のふちを示す線に強弱をつけ、生き生きとした表情を生み出している。
ちひろの眼の描き方は、瞳に黒や茶、灰色などで色を入れる場合と、線だけで描く場合の大きく二つに分けられる。良く見ると、まぶたや目じりの線の強弱の付け方、瞳の形などが一つ一つ違う。ちひろは、子どもの性格や年齢、心の動きに合わせて描き分けた。
ちひろは瞳を最後に描き入れることが多かった。絶筆になった赤ちゃんの絵も、最後に瞳を入れて達成させた。そのときの瞳の色は、淡いグレーだった。
画家を志してから、ちひろはどこへ行くにもスケッチブックをたずさえて、鉛筆を走らせた。絶えず周囲を観察し、形を捉えようとする画家の情熱は、表現を支えるデッサン力として実を結ぶ。
やっぱり、ちひろの絵っていいですよねー……。大好きです。
正月休みに、一泊の人間ドッグに入りました。40歳になってから、年に2回うけています。日頃読めない分厚い本を6冊持ち込み、一心不乱に本を読みふけるのが楽しみです。泊まりは今はホテルです。山の中にポツンと建つリゾート・ホテルです。地元のホテルからハゲタカ・ファンドに買収され、今は韓国資本です。そのせいか、お客にも韓国人が多く、ホテル内にはハングル文字が目立ちます。夕食はバイキングです。私は、これが苦手です。ダイエットをしていますので、控え目に食べようと思うのですが、バイキングだと小皿にいくつも、何回も盛りつけて食べられるので、どれくらい食べたか分からなくなります。お風呂には露天風呂もあり、見上げる半月が皓皓と輝いていました。
(2008年8月刊。1600円+税)