弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2009年1月 7日
ネコはどうしてわがままか
生き物
著者:日高 敏隆、 発行:新潮文庫
ウグイスが、なぜ、あんなによくさえずるのか?それはウグイスが、なわばり制の鳥だから。ホーホケキョという声は、オスのなわばり宣言なのだ。オスは、こうして守っている自分のなわばりの中に入ってきたメスとつがうのだ。
ドジョウはひげで水底に触りながら、あちらこちらと探ってまわる。食べものは水底で半ば腐った、分化した有機物を食べる。もともと溶けたようなものだから、効率よく腸に吸収され、かすなど残らない。だから、ドジョウの糞は、一緒に吸い込まれた土砂の粒だけ。つまり、ドジョウは糞を出さない。うへーっ、そ、そうなんですか。知りませんでした。
水上のミズスマシは、空中からの敵と水中からの敵と、両方に備える必要がある。だから、もともと左右一つずつある目が、それぞれ上下2つに分かれた。だからミズスマシには目が4つある。うひょーっ、目が4つもあるんですか・・・。
では、ミズスマシは前方をどうやって見るのか?それは波で見る。つまり、水面の波を触角でとらえ、前方の様子を知る。ミズスマシは水面の波にひかれ、その波の源へ近寄っていこうとする。これを走波性という。近寄ってみて異性と分かったら、すぐさま生殖行為に移る。同性だったら、離れようとしてはまた戻るのを何回か繰り返して、ようやく離れていく。
アメンボは、6本ある肢のうち4本の肢の先が油気があるので、水の表面張力で浮かんでいられる。残る2本の肢は油気がないので水にぬれる。この2本の肢を水につっこみ、オールのようにして水をこぐ。だからアメンボは、右にも左にも自由自在に水上をすいすい走ることができる。アメンボは異性に対しては、前肢で水をたたいて波の信号を送る。お互いに前肢で波の信号を送りかわして思いを遂げる。モグラは土の中にトンネルをはりめぐらす。ミミズがそのトンネルに落ちて驚きばたばた音を立てると、その音を聞きつけてモグラが走ってきてミミズを食べる。モグラは目が見えないから、明るくした金鋼パイプの中を走り回る。
カラスは直径10メートルもあるという大目玉の気球を怖がる。
カタツムリのセックスは大変だ。ともかく、お互いが男であり、女であるわけだから、一匹の中の男と女が両方とも、その気にならなければならない。出会った2匹は角でなであい、体を触れてくねらし、頭のこぶをふくらませてこすり合って、何時間もかけて口説きあう。ときには半日も一日もかけてやっと機が熟するとお互いに長いペニスを伸ばし、それを互いのメスの部分に挿入する。そして、また長い時間をかけて精子を出す。
タイトルは忘れましたが、このカタツムリのセックスを映像にしたフランスのドキュメント映画があります。いやあ、まるでポルノ映画を見ているような錯覚に陥り、体中ぞくぞくするほど、なまめかしい映像でした。
トンボは、4枚の「はね」を全部別々に動かすことができる。トンボは、独立して羽ばたく4枚の「はね」で「はね」の角度を変えたりできるので、翼が回転するだけのヘリコプターである一般の昆虫より、もっとデリケートな飛行を楽しんでいる。
夕方になると、スズメたちは街路樹に集まって、大変な騒ぎをかき立てる。だけど、なぜ、こんなに騒ぐのか、人間は解明できていない。
ツバメが家の出入り口に巣をかけるのはスズメのため。ツバメはスズメを嫌っている。スズメからヒナがいじめられたりするからだ。それでスズメがやってこないところに巣を作ろうとする。スズメは人間を大変に警戒している。人が絶えず出入りする家の入り口には絶対に巣を作らない。だから、ツバメは、この性質の裏をかいて、できるだけ人の出入りの多い家の軒先に巣を作る。
一匹でじっと獲物を待ち伏せるネコと違い、イヌは歩き回って獲物を探し、見つけたら、追いかけていって狩りとる動物だ。イヌは歩き回ることは、全く苦にならない。それどころか、それが楽しみだ。
イヌをあまり大事にしすぎると、イヌは勘違いする。自分こそがリーダーだと思って、飼い主の言うことを聞かず、勝手気ままに振る舞う。そこで、訓練所では、トレーナーがイヌに鎖をつけて引きまわす。イヌに、リーダーは、自分ではないことを思い知らせるのだ。なーるほど、ですね。
本来は単独生活しているネコたちで親密なのは、親子関係だけ。親子といっても、父親との関係は全くない。子どもは自分の父親を知らない。子どもが知っているのは、授乳して世話をし、育ててくれる母親だけ。子猫が鳴けば、母ネコは飛んでくる。しかし、母ネコが鳴いて子ネコを呼んだからといって、子猫は母ネコのところに飛んでくるわけではない。
ネコたちの「わがまま」は、これで理解できる。
生き物について、さらに理解することができました。とても面白い本です。
あけましておめでとうございます。今年もぜひご愛読ください。
お正月は、朝起きて雨戸をあけると薄暗く、雨でも降りそうな気配でした。お節料理をいただいていると、やがて音もなく雪が降ってきました。綿をちぎったようなボタン雪です。地表に落ちた雪は積もる感じではありません。やがて雪は一段と激しく降り、多難な幕開けを予感させました。ところが、ひとしきり降ったかと思うと、そのうちに雪は止み、薄日が差し始めました。午後からはすっかり晴れ上がり、今年の景気も、これほど早く回復してくれたらいいなと思わせます。年賀状を読み終え、ポカポカ容器に誘われて庭に出て、クワをふるって畑仕事を始めました。これが何よりのストレス解消です。畳一枚分の土地を掘り起こすと、ふーっ、と、ため息をもらし、腰に手を当ててしまいます。球根を植えかえてやるのです。球根はどんどん分球していきますので、それをうまく分けて植え付けます。娘から、「それは何という花なの?」と訊かれますが、悲しいことに球根を見て分かるのは、チューリップのほかはダリヤくらいです。花が咲いたら、もう少し花の名前を言うこともできるのですが・・・。
庭を掘り起こしていると、いつもの愛嬌いいジョービタキがやってきます。やあ、がんばっているね。そんな感じで、声をかけてくれます。これは本当のことです。スズメより一回り大きい名を知らない灰茶色の小鳥もやってきました。掘り起こしたあとの虫を狙っているようです。黄色いロウバイの花が盛りです。においロウバイと言って、通りかかった近所の人がロウバイの匂いですねと声をかけるのですが、残念なことに鼻の悪い私はロウバイの匂いはかすか過ぎて、よく分かりません。
正月を過ぎて、少しだけ陽の落ちるのが遅くなった気がします。1月3日は、夕方5時10分に日が沈みました。それから30分間、5時40分ころまでは夕方の明るさです。春が待ち遠しいです。
(2008年6月刊。400円+税)