弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年11月30日

貧困の現場

社会

著者:東海林 智、 発行:毎日新聞社
 ホームレスは、3年を超える野宿生活が身体をむしばみ、内臓がボロボロの状態になる。
 いったん住居を失うと、再び住居を借りるのは至難の技だ。不安定な仕事では、驚くほど簡単に住居を失う。
 児童養護施設出身者のすべてが人生に失敗するわけではない。だが、貧困に陥っていく確率はかなり高い。
 店長になって、月収が8万円も下がった。残業時間は過労死の危険が指摘される80時間を超え、86時間にもなった。そして、店長として、1年間のうちに6回も店を変わった。配置転換が多すぎる。
 派遣労働者は名前を呼ばれない。「そこの派遣さん」とか「お兄さん」「お姉さん」。まるで機械の部品のよう。個を奪われてしまった。
 職場のいじめが増え始めたのは、成果主義が導入されたのと同じ。職場の雰囲気がギスギスしてしまった。成果主義の導入は、労働者同士の人間関係を押しつぶす方向での成果を上げている。職場の連帯感は希薄になった。成果を競い合い、その結果が正確にかは別として賃金に跳ね返るのだから、人にかまっている余裕はない。ギスギスした職場の人間関係は、小学校のようないじめさえ引き起こす。個性の尊重や労働者の意欲の発揮を狙うという旗のもとに導入された成果主義は、人件費削減の目的の方が最終的に強くなってしまった。
 今の日本社会は本当にギスギスしていますよね。政治の世界で嘘がまかり通り、なんでも自由競争を必要かつ善とするなかでは、強い者、お金持ちばかりが優遇される世の中だからです。やはり、弱者、貧乏人にもっと社会全体があたたかい目をもってきちんと人間らしく生きられるように処遇されるべきだと思います。
 庭のあちこちから水仙の仲間がぐんぐん伸びています。冬に咲く花たちです。急に寒くなって風邪をひいている人が目立ちます。新型インフルエンザが猛威をふるうと最大6万人の死者が出ると予想されているそうです。お互いに気をつけましょうね。といっても、結局のところ、その人の持つ自然免疫力ですよね。そのために私も、早寝早起きの健康的な生活を心がけています。
(2008年8月刊。1500円+税)

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