弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年11月20日

コンビニのレジから見た日本人

社会

著者:竹内 稔、 発行:商業界

 コンビニでは、日本人は一切の緊張から解放される。緊張しながらコンビニに入ってくる客などいない。コンビニは、お客の「もっと便利に」というわがままに応える形で成長してきた業態だから、お客はリラックスして、自由気ままにふるまい、本音が出る。
 今、日本全国にあるコンビニは4万店舗を越す。客は、コンビニの従業員を人間として見ていない。客は、売り場に並んでいるもの以外は、すべてタダでもらえる物と認識している。コンビニで働いてみると、お客から受けるストレスですぐにこの商売に嫌気がさすだろう。
 コンビニの従業員は仕事に誇りをもてない。こんなひどい客にしたのは、実はコンビニ側だ。今、コンビニを訪れる客に常識はない。多くの経営者がコンビニのレジに立ち、客の相手をすることに嫌気がさし、コンビニをやめていく。
コンビニがトイレを無料で開放したころから、何かがおかしくなった。コンビニのトイレを利用した客の7割は、商品を購入せず、レジを素通りし、お礼の一言も発せず、しかも汚すだけ汚して出ていく。そこで、きれいなトイレを維持するためには、コンビニは最低でも1時間に1回はトイレを清掃する必要がある。
 いやあ、こう言われると、私も切羽詰まってコンビニのトイレを利用したことがありますので、申し訳ないとしか言いようがありません。それでも、私は、そのあと、別にほしくはなかったのですが、お菓子を買って一応、客にはなりました。
 現在、客の行動や言葉は限度を超えている。コンビニには、どんなことでも要求してかまわないと思いこんでいるし、その要求が叶えられて当然だとも思いこんでいる。つまり、コンビニは下僕(しもべ)だと認識している。当然、発する言葉も命令口調だ。命令が実行されないと、口汚く罵倒する。そして、下僕なのだから、無償で労働すべきであって、何かしてくれたから余計に買い物をしてあげようなどといった気遣いをする必要もない。
 挨拶のないコンビニ店舗では、お客がコンビニに対する緊張感を失い、それこそ「何でもアリ」の状況となっていく。万引きが蔓延し、備品は手荒く扱われる。これに対して、コンビニ店員が大きな声で挨拶すると、それだけで自信があると思わせる効果がある。
コンビニで雑誌を立ち読みしている客は、ほとんど商品を購入しない。そこで、雑誌をビニールひもでしばってみた。すると、完売するようになった。というのも、漫画雑誌を立ち読みする人は、その雑誌を購入しない。購入する人はできるだけ状態の良い雑誌をほしがる。
 横柄な態度をとる客、想像力が欠如しているとしか思えない客は決して若者ではない。その多くが、人生の酸いも甘いもかみ分けたはずの熟年世代なのである。コンビニで支払うとき客がお金を投げつける。そんな人が増えている。そして、そんな人の持っているお金(お札)はクチャクチャになっている。そのうえ、お金を大事に扱わない人は、コンビニで募金する確率が非常に高い。いやあ、そうなんですか……。
 コンビニの店内で、ケータイで話しつつ徘徊する客が増えた。そのため、コンビニ店員は身動きが取れなくなった。1時間や2時間程度は、平気で店内を徘徊する。
 コンビニが襲われることがある。しかし、警察は全くあてにならない。自らの仕事に命をかけているのは、警察官よりコンビニ経営者なのではないか。
私の知人も、午前3時から5時までの魔のゴールデンタイムは他人に任せられないし、かといって自分もおっかなビックリなので、ストレスがたまるという話をしてくれました。日本人とコンビニという切っても切れない関係にあるところに存在する大きな問題の一端が鋭く提起されています。私のような、月1回コンビニを利用するかどうかというのと、日本人の状況はまるで違うようです。私は出張したとき、ミネラルウォーターと朝食用の野菜ジュースをコンビニで買い求めますが、コンビニに入るのはそれだけです。コンビニは日本社会を破壊する存在だと考えているので、なるべく利用したくないのですが、このときばかりは仕方がありません。ホテルの近くに昔ながらのパパ・ママ・ストアーなんて絶対にありませんからね。
ピアノとフルートの生演奏を聴く機会がありました。久しぶりのことです。ビゼー作曲の「アルルの女」のメヌエットも演奏されました。この曲は私が小学生のとき、昼休みに流す校内放送を担当していて、1年間、毎日のように流していましたので、私の身体にすっかりなじんだ曲なのです。一度、昼休みの前、中休みのときにかけて先生に叱られるという失敗もしました。すばらしい演奏を聴いていると、身体が自然に揺れ、陶然とし、陶酔感から脱力して深い睡眠モードの心地になっていました。
 知人の女性にもフルートを習っている人がいますので、一度、彼女の演奏も聞いてみたいと思ったことでした。
(2008年9月刊。933円+税)

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