弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年11月12日

イマイと申します

社会

著者:日本テレビ報道特捜プロジェクト、 発行:新潮文庫

 私も最近、振り込め詐欺の被害者から相談を受けました。例の葉書が送られてきたので、ケータイ料金を滞納したという督促内容に心当たりはなかったものの、つい心配して電話をかけてしまったところ、わずか二日間で200万円もの送金してしまったという事件でした。そのとき、東京の「弁護士」が二人登場してきます。そして、被害者は20代の独身女性でしたが、50代の母親も止め役にはならず、一緒になって定期預金を解約してまで娘のために送金してしまったというのです。
 この本は、振り込め詐欺や宝くじ詐欺の犯人団に迫り、海外まで飛んで行って、その実像を暴こうとしたものです。
ドイツ国営のロトサービスセンターから、宝くじ800万円に当選したという手紙が届いので、そのために30万円も振り込んでしまったという。日テレの取材班が代わって電話すると、コールセンターは実はドイツではなく、オーストラリアのシドニーにあることが判明した。海外にインターネットを利用したIP電話で転送されているらしい。
 そこで、日テレ取材班はシドニーに飛んだ。そこには、日本人女性を含んだテレコールセンターが確かに存在した。しかし、日本人女性たちは素顔をさらすことはなかった。
 昔、豊田商事というのがありました。金の延べ取引をしてもうけているという宣伝文句でしたが、実際には純金なんてまったく扱っていなかったというインチキ商法でした。このときもパートのおばちゃんたちによるテレコールセンターが「活躍」しました。時給1000円でひっかける役割を担ったのです。自分が話す儲け話のセールストークが本物なら、時給1000円なんてものではありません。 ところが、パートの女性たちは時給1000円をもらいながら、100万円を投資したら数ヶ月で何百万円にもなるというような夢のような話を売り込んでいたのです。シドニーにいた日本人女性も、同じようなことをしていた(させられていた)わけです。
 日本で海外宝くじの販売は違法である。このダイレクトメールは、一通当たり200〜300円のコストがかかっている。いったい日本、そして世界にどれだけ送られているのだろうか。ダイレクトメールはフランスから送られ、その返信先はすべてオランダ。オランダの私書箱が返信用封筒の宛先となっている。
 フランスから発送するのが最も安いから。ただ、大量に送ると日本の税関に捨てられてしまうので、小分けにして何回も送る。1年間に送るダイレクトメールは、日本だけで500〜600万通。世界全体では年に8000万通になる。宝くじにあたった人は一人もいない。まるでインチキなのである。いやあ、これってすごい数ですよね。それだけの経費をかけても十分採算があうのですね。
 ハガキに書かれている電話番号は、電話転送を請け負う業者のもの。そこに電話をかけると、自動的に転送されて、この振り込め詐欺グループの携帯電話にかかる。間に転送業者をはさむため、詐欺グループが電話を受けたときも、転送業者への支払いが発生する。
振り込め詐欺の舞台裏を暴くという点ではもうひとつ物足りなさを覚えましたが、その真相に迫るという点で、勉強になりました。
(2008年9月刊。740円+税)

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