弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年9月 6日

人とロボットの秘密

社会

 私も手塚治虫の「鉄腕アトム」は大好きでした。そして、「鉄人28号」や「エイトマン」は小学生時代のころよくテレビでみていました。そんな状況にありますから、私たち日本人にとって、ロボットはかなり身近な存在だと思います。
 1970年に1万9000台だったロボットの製造台数は、1980年には10倍。 80年代後半には、世界のロボット設置台数のうち半数が日本製のロボットとなり、最盛期には世界シェアの7割を占めた。21世紀に入り、2001年でも世界のロボット設置台数75万台のうち、半分の38万9000台が日本製である。
 人型機械、ヒューマノイドの分野に限ると、欧米と比べて大きくわが日本の研究が進んでいる。ヒューマノイド研究者の数が欧米と桁違いに日本が多い。だから、成果も大きい。ヨーロッパでは、まだ若い研究者でも、人型ロボットの研究は神への冒涜だなんて言う人がいる。
 日本人は、知能ロボットの研究・開発分野では欧米とは異なる伝統をうち立て、その成果は日々、新しい人間観を提起している。
 ロボット工学は、金属を素材とする「クール」な学問ではない。人間の血肉を「どうやれば、それを自分たちで再現できるか」という究極のレベルまで探求しようとするライブな分野である。
 知能ロボット研究では、未知の事態に対応する能力が知能だという定義が広く受け入れられている。そのためには直感が必要だ。
 知能とは、人間の主観をはなれて客観的に存在するもの、実体をもつものではない。つまり、知能とは、コミュニケーションという現象の際に観察される主観的な現象である。
 人間は人間を理解するために脳を、五感を進化させてきた。だから、人間は人間を理解するための脳を持っているがゆえに、みな究極的に人間とは何かを知りたいという欲望をもっている。
 日本人がロボットに親しみを感じる原因の一つに、江戸時代のからくり人形の精巧さに感嘆してきたという事実も指摘されています。JR久留米駅頭には田中久重のからくり人形を模した大きな時計が据えられています。時間になると、その人形が中から飛び出してくるのです。すごいです。文字を書く人形まであったというのですからね。
 でも、結局は、ロボットは人間にすべて置き換わることはありえません。なぜなら、人間はそんなに簡単な存在ではないからです。だってそうでしょ。自分で自分のことがよく分からないし、自分の身体ひとつ容易に操作できないじゃないですか・・・。
(2008年7月刊。1400円+税)

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