弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年8月29日

イチローの脳を科学する

著者:西野仁雄、出版社:幻冬舎新書
 7月末にイチロー選手が日米通算安打3000本を達成したというニュースが大きく報じられていました。すごい記録のようです。
 私はテレビを見ませんし、見るスポーツは、野球も相撲も、もちろんサッカーにも、まったく関心がありませんので、イチロー選手の活躍状況をナマで見たことはありません。でも、すごい選手らしいというのは、活字を通して知っています。この本は、そのイチロー選手のすごさを脳の働きから迫り、解明しています。なるほど、すごい選手だと思いました。
 イチロー選手のすごさは高校時代に始まります。高校での通算打率は5割を超え、本塁打も19本放ち、三振はたったの3回だけ。
 1994年から2000年まで、イチローは7年のあいだ、パリーグで連続首位打者を獲得した。アメリカのメジャーリーグに移ってからも、1年目から242本の安打を放って首位打者となり、新人王とMVPに選ばれた。2004年には、262本という年間最多安打の世界記録を打ち立てた。
 イチローの特色は、非常に体の反応がよく、内外角高低の変化、直球・変化球に対して柔軟に対応できること。ピッチャーマウンドからホームプレートまでの距離は18メートルあまり、時速150キロだと、球は0.44秒でバッターの手元まで来る。イチローは、この2分の1秒以下のあいだに、内外角、高低直球・変化球を見きわめ、バットを振ることができる。うむむ、すごいですね。
 野球選手は、肩胛骨と股関節の連鎖の動きが大切。この動きがスムースだと、たとえ姿勢を崩しても、それなりの対応ができる。
 イチローは、自分の愛用する野球道具であるバット、グラブ、スパイクを入念に手入れすることでも有名だ。遠征に出かけるとき、イチローは、自分専用の枕、電動の足もみ器を持参する。そして、昼食は毎日、奥様の手づくりカレーライスを食べる。
 イチローは、かたくなに規則正しく、きちっと決まった手順で、準備し、ベストの条件になるように心がける。イチローの几帳面さ、一徹さを示している。
 イチローは小学生のころから、1年365日、1日に7、8ゲームの球、合計250球をバッティング・センターで打ち込んでいた。うへーっ、す、すごいですね、これって。
 時速150キロの球を、中学3年生のときに、イチローは打てた。そして、ストライクではないボール球は絶対に打たないようにしていた。ひゃあ、これは、すごーい。
 自分の意思で自主的に運動することが、脳の活性化に大きく影響している。
? 運動を自主的にすると、ドーパミン神経系が活性化する。
? ドーパミンが放出されると、神経幹細胞が活性化する。
? 70〜80歳になっても、脳の中には神経幹細胞が存在している。
? 脳の活性化には、幼少期はもちろん、年をとってからも、何ごとも積極的な気持ちで、前向きに行動するのが大切。
 日本人がアメリカで野球をやろうと思ったら、何より大切なことは、自分で自分を教育できること。
 これはイチローの言葉です。
 物事を一歩はなれたところ客観的に観察し、全体像を冷静に感じとる能力にイチローは長(た)けている。さすがは、イチローです。
(2008年3月刊。720円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー