弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年8月29日

最後の銃弾

著者:サンドラ・ブラウン、出版社:集英社文庫
 アメリカ社会の奥深い闇をえぐり出す法廷ミステリー小説です。著者はなんと女優出身の作家です。日本にも、そんな作家がいましたね。私と同じ世代です。モデル、女優、テレビのレポーターをつとめたあと、小さいころからの夢だった作家に転じたというのです。まあ、私に負け惜しみを言わせてもらえば、私のモノ書き志向は決して小さいころからなんていうものではありません。ここでは弁護士になってから、ということにしておきます。
 タイトルの意味は、最後の最後になってようやく分かります。ということは、ミステリー小説の作家って、最後の結末を考えてから、書き出しを書きはじめるのでしょうね、きっと・・・。
 出だしは、まだるっこしい感じです。ええいっ、なんだかつまらないな。そう思わせますが、少しずつ光るものがあるので、ついページを繰ってしまいます。すると、そのうちに、なんだか思わぬ展開になっていくのです。いやあ、このあと、どうなるんだろう・・・と。
 そして、女性作家ながら、かなり過激な濡れ場シーンも出てきて、うむうむ、で、どうなるの?なんて思わせるのです。いやあ、実にうまいものです。文庫版で600頁を超える大作です。
 ミステリー小説ですので、ここでタネ明かしをするわけにはいきません。いくつものドンデンガエシがあります。そのなかで、アメリカ社会の腐敗と司法・警察の現実的意味を考えさせられます。
 それにしても、捜査にあたった警察官が被疑者の女性に本物の恋をしたらどうなるのか、なんて、日本のミステリーまたは警察小説にありましたっけ・・・?その着眼点も奇抜だと私は思いました。
 初めてこの著者の本を読みましたが、アメリカではかなり売れているそうです。フランスから帰国する途中の飛行機と車中のなかで一心に読みふけった本です。
 フランスでは、歩道に張り出したテラス部分にテーブルを並べ、そこで食事をします。室内にもテーブルがあるのですが、そこはいつもガラガラです。当然、通行人がすぐそばを通っていくわけですが、お互いにそんなことは気にしません。通行人を眺め、また眺められながら、多くのカップルが楽しく会話しています。もちろん、自動車の排ガスもかかることになりますが・・・。夜8時、9時になっても明るいので、夕食もテラスでとります。蚊やハエがいないのは、町が清潔なのと乾燥しているからなのでしょうね。日本でこんなことをしたら、蚊とり線香やハエ取り紙がたくさん必要になることでしょう、きっと。
(2007年12月刊。933円+税)

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