弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年8月22日

すてきな田舎、元気なふる里

社会

著者:田中勝己、出版社:かもがわ出版
 読んでいると、なんだかふんわりあったかくなってきて、元気の出てくる本です。残念ながら、私は木曽町にまだ一度も行ったことがありません。この本によると、町おこしに成功した、なかなかいい町のようです。私も、ぜひ一度いってみたいと思います。
 木曽町は、日本で最も美しい村連合に加盟しています。この連合はフランスにあるものを日本に取りいれたものです。田舎だって、いえ、田舎にこそ美しい自然・文化風景はあると主張し、都会に住む人々にそれを再認識してもらおうという取り組みです。
 木曽町は音楽祭にも取り組んでいます。日本のトップレベルの演奏家が集まり、1週間のあいだ続きます。第1回は1975年ですから、もう33年にもなります。
 そして木曽馬の保存会があります。馬に乗って登山するという試みもなされているそうです。西欧から入ってきたサラブレッドではなく、日本古来の丈夫な馬です。馬というと、今の私たちは競馬場に登場するサラブレッドを思いますが、日本古来の馬は、日本人と同じで、ずんぐりむっくりの体型をしていたようです。
 そして、木曽は、あの木曾義仲と巴御前の出身地でもあります。義仲は31歳で亡くなったので、1年間のテレビ・ドラマは無理とのこと。いやあ、そういうことなんですね・・・。
 さらに、木曽福島町は世界のケータイの3割、そしてターボエンジンの9割を生産している町でもある。ひぇーっ、そ、そうなんですか・・・。
 著者は30歳のとき、木曽町の町会議員に当選(日本共産党)し、その後、30年間にわたって町議をつとめた。町長選に出馬することになったのも、他に適任者がいなかったことによる。運動期間が短かったのに、現職を負かしての当選だった。
 町長として、オウム真理教と生命をかけてたたかい、勝利しました。そして、町づくりに町民の知恵と力を吸い上げていく様子は、読んで、すがすがしさを覚えます。
 この本は、町長が職員向けに「町長ほんねとーく」を書いていたのをまとめたものです。大変よみやすい内容で、さらっと読めますが、同時に、大変こくのある内容でもあります。
 著者は、いま町長2期目、70歳を過ぎて元気にご活躍のようです。今後とも、さらに町づくりにがんばってくださいね。大いに期待しています。
 ニースからバスに乗って1時間かけてサン・ポールという町へ行きました。小さな丘全体がお城みたいに古い建物でぎっしり埋まっています。まるで古代の空中都市です。宮崎駿監督のアニメ映画でも見ている気分になりました。古い中世時代の建物がそっくり残っていて、それが観光客を誘引しているのです。日本でも、そういう発想がもっと大切にされたらいいと思いました。おじさん、おばさんの5人ほどが広場でペタンクに興じていました。カフェーでコーヒーを飲みながら、しばし眺めたことでした。
(2008年4月刊。1700円+税)

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