弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年8月18日

クモの糸の秘密

著者:大?茂芳、出版社:岩波ジュニア新書
 クモは4億年もの進化の歴史をもっている。うひょーっ、す、すごいですね。そのクモの糸の秘密が少し解き明かされています。
 クモの糸を取り出す仕掛けが紹介されていますが、私には、出来そうにありません。
 クモの糸をクモから取り出すには、訓練はもちろん、クモの習性を理解することが大切であるとともに、取り出す人の精神的な安定性が必要である。採糸者の心が落ち着いていないと、クモから糸はうまく取れない。うむむ、すごく難しいですよね、これって・・・。
 著者はクモの糸を集めました。長さ100センチで、重さは0.9グラム。平均的なクモの糸は1本あたり直径が6ミクロン、密度が1平方センチあたり1.27グラム。だから、2万5000本のクモの糸を集めたことになる。すごーい。
 クモを飼うにしても、毎日、霧吹きをして水分を与えてクモを弱らせないようにし、糸を取るときにも疲れさせない工夫が必要だ。クモを地面に落として衝撃を与えてはいけない。クモから連続的に糸を取ると、クモは当然に疲れてくる。扱い方がまずくてクモに嫌気を起こさせると、クモは糸を出すのに協力的でなくなる。
 クモの糸は非常に細い。ジョロウグモの牽引糸では、3〜4ミクロンの直径。ノートの紙の厚さは50ミクロンなので、その10分の1以下である。
 クモは落ちてもすぐには死なないが、落ちた衝撃でかなり弱ってしまう。クモに糸を出させるためには、クモを安心させる必要がある。人間は外敵ではないとクモに思わせる必要があるのだ。
 クモの嫌いな採糸者には、クモに牽引糸を引き出させることは出来ない。時間に追われている人もダメ。心を落ち着けて、クモの心を知るように心がける必要がある。クモとの相性は大切だ。家庭の問題は引きずっているようなときもうまくいかない。
 一日中がんばって採糸しても、1人あたり50ミリグラムも糸が取れたら最高だ。
 クモから実際に糸を採ろうとすると、クモはしばしば糸を切るため、得られるのは、 30センチから50センチの長さの糸の集合体でしかない。このため、現実には、理論強度の何倍もの強度になるように糸を集めないと、糸は簡単に切れてしまう。糸束を少しねじるのも、そのための工夫の一つだ。
 クモは世界中に4万種いる。日本には1200種。すべてのクモは糸を出す点で共通している。そして、クモの腹の中には、7個の絹糸腺がある。7種類の絹糸腺からは、それぞれアミノ酸組成の異なるたんぱく質が分泌され、それぞれの目的にあった機能を果たしている。
 クモは昆虫ではない。昆虫の脚は6本なのに、クモの脚は8本だから。クモ類の祖先は水中で生活していた。クモは共食いするので、大量飼育はできない。
 クモの糸は軽くて柔軟性があり、防水性もあって強いことから、繊維としてさまざまな用途が考えられる。たとえば、医学分野での手術用の縫合糸。防弾チョッキやパラシュート用のひも、など、
 自分で集めたクモの糸をよって束にして、自分の体重を与えたという話には感動します。この本は決して子ども向きというものではありません。大人にとっても感動の本です。
(2008年5月刊。780円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー