弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年7月16日

ネゴ・スキル

司法

著者:弁護士・三四郎、出版社:文芸社
 私は相手方との交渉がいつまでたっても苦手です。タフ・ネゴシエーターと呼ばれる人たちの縦横無尽の駆け引きを、いつもうらやましく思いながら眺めています。私の交渉のやり方は、ひたすら誠意を尽くすということです。もちろん、これでうまくいくこともあるわけです。でも、そんなことでは解決しないことも多いのです。
 ちなみに、私は、商品を値切って買うことも好きではありません。定価で買うか、買わないか、です。そんなつまらないことで、精力を無駄につかいたくないという気分です。ですから、たいてい、あとになって後悔しないように何も買いません。海外旅行に出かけたときも、食事は別として、買い物にお金をかけることは絶対にしません。記念になる小物を買うだけです。家の中には必要最小限のものさえあればよいのです(もちろん、たくさんの本に囲まれて・・・)。
 相手から脅されたとき、どうするか。まず、心を強くもつ。人は交渉相手の手強さを過大評価するものだ。冷静になり、簡単には引き下がらないと決意する。そのうえで、相手に向かって「脅しはなしにしましょう」と静かに告げる。すると、たいてい相手は脅しをやめてしまう。
 それでも脅しが続いたときには、相手の話を黙って聞き続ける。そのうち、だんたん言葉の勢いがなくなり、とうとう脅しの理由を説明しはじめ、ポロリと自分の弱点をもらす。そこで出番が来る。怒る気持ちは分かる。脅しのようなことは今後やめよう。そう言って休憩をとる。コーヒーとクッキーを出す。雑談をし、ジョークを飛ばす。すでに、相手には当初の勢いはなくなっているはずだ。
 脅しが本物か、ブラフかを見定めるのが必要。それには質問をする。質問を繰り返しながら、相手の表情、態度を見る。答え方と声のトーンを聞く。経験を積んだら見抜くことができる。ブラフは軽くあしらい、軽くいなす。
 手強いとみた相手との本格的な交渉は2人でやることだ。脅しに対抗するとっておきの手は、聞こえないふりをする、おバカなふりをすること。
 聴き方の4原則は、第1に、相手の目を見る。第2に、微笑む。微笑みは、相手を受け入れているというサインである。第3に、うなずく。これは話を聴いているというサインだ。第4に、相槌をうつ。これで話の流れをよくする。聴くとは、忍耐でもある。
 相手を説得しようとするときには、相手の言葉をつかう。人は、他人の言葉よりも、自分自身の言葉によって説得されるものだ。
 人は対面する相手の顔から55%、声から38%、そして言葉から7%の割合で情報をつかむ。
 嘘をつくとき、人は手を隠す。手の動きから心を読まれるのを恐れるから。嘘をつくとき、人は手で顔をさわる。嘘を隠そうと思って、口を押さえているのだ。嘘をつくとき、人は何度も姿勢を変える。この場から早く逃げ出したいという無意識の欲求がそうさせる。嘘をつくとき、人は目だけで笑う。不安を隠すためだ。
 嘘をつくとき、男性は視線をそらす。女性は相手を凝視する。男は、嘘をつく罪悪感にさいなまれて視線をはずす。女性は嘘がバレたかバレなかったかを確認しようとする。
 上手に交渉を締めくくる方法がある。相手を評価し、ほめること。相手がプロであっても。勝ってもうれしい顔を見せず、相手が負けていても勝利感を分け与える。
 交渉下手の私にとって、すごく勉強になりました。
 先日の仏検(一級)の結果が届きました。これまでで最低の34点でした(120点満点)。昨年は45点でしたし、その前には70点とったこともありました(合格点は90点以上)ので、受け初めて10年以上になりますが、最悪です。体調が不良だったという言い訳はしません。頭の中がフランス語モードになっていなかったとしか言いようがありません。やはり1ヶ月以上前から試験に向けて頭のなかを切り換える。具体的には朝晩、フランス語を聞いて書く。過去問にあたる。こんなことを怠ったからです。
 8月にフランスへ行く予定ですので、いささか心配になる結果でしたが、臆することなくフランス語を話してくるつもりです。
(2008年3月刊。1200円+税)

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