弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年4月28日

拡大するイスラーム金融

中東

著者:糠谷英輝、出版社:蒼天社出版
 最近、ときどき話題になるイスラーム金融について知りたいと思って読みました。
 世界におけるイスラーム教徒(ムスリム)は15億人。これはキリスト教に次いで第2位で、シェアは20%。しかし、ムスリムは人口増加率が高く、2030年代には世界人口の3分の1となり、キリスト教を抜いて、世界最大の宗教となる。地域別でみると、最大のムスリム人口をかかえるのはアジアである。ヨーロッパでは、フランスに6000万人、ドイツに300万人いる。中国にも3900万人、ロシアに2700万人いる。日本には18万人と言われているが、実数は1万人以下とみられている。
 イギリスに居住するムスリム人口は180万人で、総人口の3%。ただ、そのうちの6割が中流以上であって、富裕層が多い。イギリスのムスリムは、6割がパキスタンとバングラデシュ系であって、ムスリム人口の3分の1がロンドンに集中している。
 アメリカには600〜800万人のムスリムが居住しているが、イスラム金融の拡大はすすんでいない。アメリカでは、ムスリムは地域的に分散していて、ムスリム地域社会を形成していない。むしろ、アメリカの地域社会に溶けこもうとしている。
 2007年3月に、サウジアラビアの石油化学プラント建設事業に向けて三井住友銀行が58億ドル(7000億円)の融資をしたとき、うち6億ドル(720億円)はイスラーム金融で調達された。
 イスラーム金融とは、イスラム教の規範にしたがった金融のこと。具体的には、シャリーアと呼ばれるイスラム法に適合した金融のこと。シャリーアは次の4つを禁止している。第1に、利子の禁止。利子の受払いはコーランによって明示的かつ絶対的に禁止されている。イスラム教の原理の一つとして、資金は退蔵せず、生産・役務の提供に向けるべきとされている。金銭は商品ではなく、価値保存の手段であり、商業活動等に利用されて利益配分を受けられる。
 第2に、不確実性の禁止。不確実性のある取引は、投機的な要素を有するものとして禁止されている。第3に、賭博・投機の禁止。第4に、アルコール・タバコや豚肉、武器、ポルノなどの禁忌とされる物品やサービスに関する取引の禁止。
 シャリーアに適合する形式で発行されるイスラム債券はスクークと呼ばれる。はじめて価値を生み出すもの。単に時間の経過を待つだけで金銭が増加するのは不当利得である。
 イスラム金融では、利子のかわりに利益配分という概念がつかわれる。物的財産はすべて神に属するものであり、人はそれを信託されているに過ぎない。信託された財産を有効活用した結果として、人はこのスクークが増加したことでイスラム金融が世界的に拡大した。イスラム金融は、ここ数年、年平均で15%を上回る拡大を示している。イスラム金融資産は総額で1兆ドル(120兆円)をこえる。それでも、世界全体の金融資産に占める割合は1%にすぎない。
 イスラム金融は、ムスリム社会においても10%のシェアでしかなく、ムスリムも一般金融を利用している。イスラム金融はムスリムのみが利用するものではなく、非ムスリムが利用することも可能である。マレーシアでは、非ムスリムの利用が7割を占める。
 イスラム銀行の特徴は、一般に銀行の規模が小さいこと。
 イスラム金融という言葉を最近よく聞きますので、読んでみました。少しだけ分かりました。
 チューリップは最後の一群がまだ咲いてくれています。黄色い花と赤い花の固まりです。アイリスも咲き続けています。そのそばにボタンの濃い赤紫色の花が咲いているのを見つけました。2、3日前までは固いツボミだったのですが、開いてくれました。深い赤紫色の花ビラが八重に重なっているさまは重厚さと気高さを感じさせます。島根の妻波弁護士より5、6年も前にいただいたものですが、肥料もやらず、何の世話もしていないのに、毎年ちゃんと咲いてくれます。去年いただいたボタンはお休みのようで、ツボミもつけていません。
 スモークツリーの若葉が赤味がかった茶色で光りかがやいています。若葉が緑とは限らないのですね。ちょっと見ると紅葉しているようですが、少し違います。みんな違って、みんないい。金子みすずの詩を思い出します。
(2007年9月刊。2800円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー