弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2008年3月13日
ネットカフェ難民と貧困ニッポン
社会
著者:水島宏明、出版社:日テレノンフィクション
現代日本の青年を取り巻く状況を一語であらわす言葉、それがネットカフェ難民です。フリーターとかハケンとか言っているうちはまだ良かったのです。ネットカフェも、単なる流行語でしかありませんでした。ホームレスも中高年の話だと思っていました。ところが、青年たちがネットカフェで寝泊まりしている。社会のなかに定着できない青年が大量に存在する。そのことを、たったひとつの言葉であらわしたのです。衝撃的な言葉でした。私は、福岡・天神にあるネットカフェを、恐る恐るのぞいてみました。いえ、もちろん暴力団事務所をのぞくような怖さがあったわけではありません。夜10時ころでしたが、たしかに、若い男性も女性も次々に入ってきます。背広姿のサラリーマンもやって来るのです。ええーっ、まさか、帰るところがないはずはないだろうに、なんで、こんな夜遅くに、ネットカフェなんかにやって来るのだろう、不思議に思いました。なんとか全身を伸ばせるようなブースがいくつもあります。でも、こんなところで寝ても、安眠できないでしょうし、身体の節々がきっと痛くなることでしょう・・・。
著者は、このネットカフェ難民という言葉をつくったジャーナリストです。テレビの世界で報道ドキュメンタリーの制作と、ロンドンとベルリンに9年あまり海外特派員をしていました。日本の東京で、1晩1000円で過ごせるネットカフェで暮らす人たちがじわじわと増えている現象は、なんだかおかしいぞという問題意識をもったのです。なーるほど、ですね。私も、日テレの特集番組はビデオでみましたので、この本に紹介されている写真は記憶があります。
ネットカフェは、韓国に3万店ある。日本には、まだ4000店ほどしかない。東京・蒲田にある格安ネットカフェは、1時間100円。安くしたところ、店の回転率は上がり、客の入りは倍近くになった。200席ある店内の一日の延べ利用客は300人。ネットカフェを利用する人の食費は、1日1000円。チェーン店の牛丼380円。格安外食レストランのハンバーグ定食380円。ハンバーガー1個100円。赤飯弁当180円。弁当屋の豚汁120円。これを一度でなく、2回に分けて食べる。
ネットカフェ生活は、アパート暮らしよりも効率が悪い。外食代、コインロッカー代、コインランドリー代、シャワー代など、アパート生活ではかからない費用がかさむ。
さらに、新品の下着を使い捨てにしたり、意外に高くつくのがネットカフェ生活だ。ほとんど、その日暮らしの自転車操業状態になっている。
徹底して、自尊感情がない。必死さがなく、無気力で、可愛げがない。できれば放っておきたいタイプ。怠情けとも目に映る。自分はダメな奴・・・、と思っている。
いま、日本に起きているのは、一般社会の寄せ場化である。かつての山谷などで見られた光景が、いまや日本全国津々浦々に広がっている。それも、日雇い派遣という形をつかって、合法的に。しかも、ケータイ、メールをつかって現代的に・・・。
専門的なスキルのないハケンが急増している。派遣の対象業種が拡大し、単純労働にまで派遣が恒常化している。日雇い派遣のように細切れで低賃金の労働では、何年やってもスキルの向上や経験の蓄積につながらない。
1985年に労働者派遣法ができて、派遣は解禁された。1999年の労働者派遣法の改正によって、派遣は原則自由化された。2003年には、製造業への派遣も解禁された。
そして、日本の大企業は空前の利益を得ている。4年連続で過去最高となった。景気回復にともなう企業業績は好調だ。人材派遣業は、2006年度は4兆351億円で、前年比41%増。01年度の2倍だ。
働く者が、部品みたいに兵器で使い捨てされる社会。正社員も安心できないし、非正規だともっと人間扱いされない。一度落ちると、トコトン落ちてしまって、はいあがれない。ネットカフェ難民は、そんな社会の象徴だ。とくに若い人たちがボロボロにされている。こんな状態に無関心でいてよいわけはない。社会全体が意識して取りくんでいくべきだ。
私もまったく同感です。お互い、できるところから、やっていきましょうよ。それにしても、日テレも、たまには、いい番組をつくるものですね。心から拍手を送ります。
とりたての竹の子が届きました。シャキシャキとした歯ざわりで、美味しくいただきました。食べながら春を実感したことです。
隣の家のハクモクレンの白い花が咲いています。朝、庭に出ると、ウグイスがあちこちで澄んだ声でホーホケキョと鳴くのが聞こえます。メジロの姿は見えますが、ウグイスのほうは、声はすれど姿は見えず、です。
鼻づまり解消のため、鼻うがいを始めました。塩を入れると、そんなに苦しくはないのですね。昼間のポカポカ陽気はいいのですが、花粉症には悩まされます。
(2007年12月刊。952円+税)