弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年3月 4日

エコノミック・ヒットマン

アメリカ

著者:ジョン・パーキンス、出版社:東洋経済新報社
 この本の序文に、次のように書かれています。エコノミック・ヒットマン(EHM)とは、世界中の国々を騙して莫大なお金をかすめとる、きわめて高収入の職業だ。EHMは、世界銀行やアメリカ国際開発庁(USAID)などの国際援助組織の資金を、巨大企業の金庫や、天然資源の利権を牛耳っている富裕な一族のふところへと注ぎこむ。その道具につかわれるのは、不正な財務収支報告書や、選挙の裏工作、賄賂、脅し、女、そして殺人だ。EHMは、帝国の成立とともに古代から暗躍していたが、グローバル化のすすむ現代では、質量ともに驚くほど進化している。
 EHMは、いったん仲間入りしたら、一生抜けられない。EHMは、汚い仕事をする特別な存在。どんな仕事をしているのか、誰に話してはいけない。妻に対しても・・・。
 EHMの仕事は、世界各国の指導者たちを、アメリカの商業利益を促進する巨大なネットワークにとりこむこと。EHMは、マフィアのヒットマンと同じく、まずは恩恵を施す。それは、発電プラントや高速道路、港湾施設、空港、工業団地などのインフラ設備を建設するための融資という形をとる。融資の条件は、プロジェクトの建設をアメリカ企業に請け負わせること。要するに、資金の大半はアメリカから流出しない。ワシントンの銀行から、ニューヨークやサンフランシスコなどの企業へ送金されるだけ。しかし、融資を受けた国は、元金だけでなく、利息まで返済を求められる。EHMの働きが成功したら、融資額は莫大で、数年たったら債務国は返済不能になる。そのとき、マフィアと同じように、厳しい代償を求める。たとえば、アメリカ軍の基地の設置など。もちろん、それで借金が帳消しになるわけではない。
 エクアドルは、EHMが政治的経済的にトリコ(虜)にした国の典型だ。エクアドルの産出する原油100ドルあたり、石油会社のとり分は75ドル。残り25ドルのうち4分の3は、対外債務の返済にあてられる。その大半は軍備などに充てられ、公衆衛生や貧しい人々への援助や教育に充てられるのは、2.5ドルほどでしかない。
 ウガンダ(アフリカ)の悪名高い独裁者だったアミン元大統領は、1979年に失脚し、サウジアラビアに亡命した。反体制派の国民を10〜30万人も虐殺したという暴君が、サウジアラビアの王族から保護され、車や召使いを与えられ、豪華な生活を過ごした。アメリカも、反対はしなかった。アミンは2003年、80歳で病死した。
 EHMは、エクアドルを破産に追いこんだ。何十億ドルもの貸付をして、アメリカのエンジニアリング会社に工事を依頼させ、もっとも裕福な人々の利益になるプロジェクトをつくった。その結果、この30年間で、生活困窮者の割合を示す公式な貧困線は50から70%へ、不完全失業者と失業者の割合は15%から70%へと大きく増えた。国家の負債は2億4000万ドルから160億ドルへと増加した。その一方、最貧層のために配分される国家予算の比率は、20%から6%へと減少した。
 今日、エクアドルは借金の支払いのためだけに、国家予算のほぼ半分をつかわなければならない。
 アメリカの実情を再認識させられました。サブ・プライムローン破綻で世界中をゆり動かしましたが、今のままでいくとアメリカの経済繁栄はいずれなくなってしまいますよね。でも、そのとき日本がどうなっているか、お互いにますます心配です。
 庭にミカンを半分に切っておくと、すぐにメジロが二羽飛んできて、ついばみはじめます。可愛らしいですよ。そこへヒヨドリが飛んできてメジロを追い払います。ジョウビタキもやって来ますが、ミカンは食べません。ジョウビタキは茶色で、尻尾が少しだけ長いスズメくらいの大きさの小鳥です。人の見えるところまで近づいてきて、鳴きながら尻尾をチョンチョンと下げて挨拶してくれるのが愛敬です。それよりもうひとまわり大きいツグミのような茶色の小鳥も庭にやって来るようになりました。図鑑をみて調べるのですが、アカハラに似て、それほど赤味はありません。もちろん、常連のキジバト、そしてわが家にすみついているスズメたちも庭中をかっ歩しています。ようやく春になりました。チューリップの咲くのも、もうすぐです。待ち遠しくて、しかたありません。
(2007年12月刊。1800円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー