弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年2月 8日

犬語の話し方

著者:スタンレー・コレン、出版社:文春文庫
 人は、強い犬よりも、怯えた不安な犬にかまれるほうが多い。
 犬から威嚇されたときは、どうしたらいいか。まず第一に、背中を向けて走り出してはいけない。犬の追跡本能を刺激してしまうから。第二に、視線をやや横斜め下に落として、一、二度まばたきをする。これは服従を示し和解を求める反応だ。そして、口を少し開いて、犬が攻撃をしかけたら受けて立つ構えを示す。次に、ゆっくり二、三歩うしろに下がる。そのとき、犬とは絶対に目を合わせない。なんとか呼吸を整えられたら、顔を少し横に向けてあくびをするか、高い声でなだめるように何か話しかける。犬とのあいだに十分な距離があいたら、犬に対して横向きになるように体を回す。このとき犬が近づいてきたら、ふたたび犬と向きあい、大げさに何度かまばたきをし、横斜め下に視線を落とし、もう一度ゆっくりうしろに下がる。犬に対して横向きになったときに、犬の興奮や威嚇の度合いに変化がなければ、ゆっくり、犬と視線を合わせることなく、自然な足どりで遠ざかる。
 いやあ、難しいですね、これって。できるでしょうかね、こんなことが自然に・・・。
 犬のオスはセックスに常に関心があるものの、実際に性欲をかきたてられるのは、発情期のメスを目の前にしたり、その匂いをかいだときだけ。メスは交尾の態勢が整って積極的になるのは、年2回の短い発情期のときだけ。
 メスの発情期は、21日間続き、3つの段階がある。第一の段階は、発情前期で、9日間ほど続く。この時期のメスは、ひどく落ちつかなく、さかんに歩きまわる。水を飲む量がふえ、歩く先々で放尿する。この尿の匂いがオスをひきつける。犬の場合、出血は排卵の前に起こり、膣の壁に変化が生じて排卵の用意が整ったあかしとなる。メスは性的魅力たっぷりの香水を尿と一緒にあたりに振りまき、膣分泌物の匂いを風とともに運び、だれかれかまわずオスを誘う。だけどメスは、夢中になったオスたちをはねつける。
 メスは、オスをじらせているのではない。まだ排卵していないのだ。排卵は本当の意味の発情期に入って2日目くらいに起こる。分泌物の水分が多くなり、色が透明になると、交尾に対して膣の準備が整ったことになる。そして、排卵があっても、精子に対する卵子の受け入れ態勢が整うまでに、およそ72時間かかる。排卵期は2、3日しか続かないので、それまでに自分のまわりに大勢のオスをひきつけておき、いざというときに選べるようにしておくのが肝心なのだ。たいてい、選択権はメスにある。父親候補は、強い拒絶にあうものと、熱心に求められるものとに分かれる。
 進化は、すぐれた遺伝子を残すには、優位な強いオスを選んだほうがいいという知恵をメスに与えた。野生の犬に比べて家犬は、それほど交尾の相手を選ばない。これは人間による意図的な犬種をつくる計画のことである。
 犬の気持ちが手にとるように分かります。本のオビに、このように書いてあります。たしかに、犬の生態について、また深く知ることができました。
(2007年9月刊。705円+税)

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