弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年1月11日

君命を受けざる所あり

社会

著者:渡辺恒雄、出版社:日本経済新聞出版社
 あのナベツネの自伝です。自民党と民主党の大連立を画策した張本人です。いったい日本をどうしようっていうんでしょうか。自分たちの思うように、いま以上に金権政治がまかりとおる日本にしようというのでしょうね。とんでもない権謀術数を駆使する野謀にたけた政治屋であることが、この本にはしなくもあらわれています。
 私がこの本を読んで一番いやな話だと思ったことは、いま読売新聞社の社屋の建っている土地を取得するまでの経緯です。もとは国有地だったのです。そして読売新聞社は通常ならその取得する可能性はとても低かったのです。むしろサンケイ新聞の方が先順位にありました。それを政治力で見事に逆転していったのです。国有地を政治家と有力マスコミで私物化しているのですね、許せません。
 政界トップとマスコミ・トップの密着ぶりは読めば読むほど、嫌な気分にさせます。ええーっ、マスコミって、権力の行き過ぎを少しは牽制する機能を果たすべき役割があるのじゃないのかしらん・・・。そんな疑問を何回となく感じました。
 政治部記者として、ナベツネ記者はさすがに有能だったようです。日米の政界の重要人物と肝胆相照らす仲となって、機密事項の相談にまで乗っていたというのです。ただ単に記事の書ける記者というのではなく、政治家と一緒に政治を動かす記者だったのです。
 同じことは、読売新聞社内部の記者同士の派閥抗争についても言えます。著者は、まさに、その激しい派閥抗争の最終的勝者なのです。著者に負けて脱落していった人には、救いようのないレッテルが何回となく貼られていき、事情を知らない第三者である私などは可哀相に思えるほどです。だから、ひとしお真実を知りたいという気分になります。本当にそうなんでしょうか・・・?。
 自民党政治とマスコミ界の権謀術数の実際の一端を知ることのできる貴重な本だと思いました。
(2007年11月刊。1600円+税)

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