弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年11月27日

解決のための面接技法

司法

著者:ピーター・デイヤング、出版社:金剛出版
 ミラクル・クエスチョンという手法があることを初めて知りました。
 「これから変わった質問をします。今晩あなたが眠っているあいだに、あなたのかかえている問題が解決してしまったという奇跡がおきたとします。明日の朝、目が覚めたとき、どんな違いから奇跡の起きたことが分かるでしょうか?」
 これを、柔らかな声でゆっくりおだやかにたずねるのです。
 このミラクル・クエスチョンが有効なのは、第一に奇跡について尋ねることによって、クライアントは無限の可能性を考えてよいことになる。第二に、質問は将来に焦点を当てる。それは、かかえていた問題がもう問題ではなくなったときを生活の中に呼びおこす。これによって、現在と過去の問題から焦点をずらし、今より満足のいく生活に目を向けさせる働きをする。問題に浸りきった思考から、解決に焦点をあてる方向へ、劇的な転換を求められる。
 このミラクル・クエスチョンをするときは、それぞれのクライアントにあわせて行わなければならない。たとえば、深刻な不幸を経験したクライアントに対しては、小さなミラクルを描かせることが大切である。
 これに答えようとするクライアントのほとんどが気持ちが明るくなり、希望をもちはじめる。なーるほど、このような質問をして、発想の切り換えを促そうというのですね。大変参考になりました。
 親と子は、お互いに腹を立て、傷つけあい、失望はしていても、お互いを大事に思っている。相手に対する怒り、精神的苦痛、失望は、大事に思われ、尊敬され、評価され、愛されたいという願望の裏返しである。
 親と子の関係に希望を見出せるように、相互の思いやりと善意のしるしを育て、強調することが必要である。そのためには、不満の肯定的側面を強調すればいい。子どもにさんざん失望させられたのに、まだ子どもをあきらめていない証拠なのだ。
 そうなんですよね。口にした言葉を額面どおりに受けとったらいけないというのは、よくあることです。
 自殺すると言っているクライアントに接したときには、まず自殺が不合理であり、危険で他の人を傷つけると説得したくなるし、自殺への偏見をもった反応を示しがちだ。しかし、これではクライアントの考え方に反するので、彼をさらに孤独に追いやり、自殺の危険を高めることになる。
 絶望しているクライアントの視点に影響されない最善の方法は、必ず別の側面があると自分に言いきかせ、それを探しはじめることである。自殺について話すクライアントがまだあなたと一緒にいて、生きて呼吸をしていることを忘れないようにするといい。ともかく、クライアントは過去のトラウマや現在の痛みにもかかわらず、どうにか生きのびている。クライアントの長所を活性化し、感情と状況をコントロールできるという気持ちにさせる。
 たとえば、「今朝、どうやってベッドから出ましたか」と問いかける。小さな、しかも否定できない事実からスタートするのが大切である。
 この本をしっかり理解したというわけではありませんが、弁護士にとってもいろいろ役に立つことが書かれていると思いました。
(2007年4月刊。4600円+税)

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