弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年11月19日

佐藤可士和の超整理術

社会

著者:佐藤可土和、出版社:日本経済新聞出版社
 小さなころから、僕は整理するのが好きだった。整理したあとの、なんとも言えないスッキリ感がたまらなかった。もやもやした霧がパッと晴れたような爽快感といったらいいだろうか。整理すること自体が、僕にとって何よりのエンタテイメントだった。
 いやあ、これって私にもピッタリです。私も、大学受験勉強のころ、気分転換にすることと言えば、子ども部屋の模様変えでした。整理整頓して部屋のなかをスッキリさせると、気分までスッキリ爽快となり、勉強もはかどりました。
 答えはいつも、自分ではなく、相手のなかにある。それを引き出すために相手の思いを整理するのが、すごく重要なこと。
 整理するには、客観的な視点が不可欠。対象から離れて冷静に見つめないと、たくさんの要素に優先順位をつけたり、いらないものをバッサリ切り捨てたりすることはできない。徐々に大切なものに焦点をあわせ、磨きあげて、洗練されたかたちにしていく。
 なーるほど、ですね。著者は、とても若い人ですが、大いに学ぶところのある、鋭い指摘だと感心しながら読みました。
 現代社会は非常に複雑な状況にある。いくつもの世界が混在し、とてつもないカオス状態が蔓延している。混沌としている現代社会においては、現状を把握するのが、不可能なほど難しい。
 空間の整理の目的は、快適な仕事環境をつくること。
 捨てることは不安との闘いである。
 捨てることは、「とりあえずとっておこう」との闘いでもある。
 広告が単に刺激的なだけでは、一瞬目を引くだけで終わってしまう。心の奥までは浸透していかない。
 相手の理解を得たり興味を引いたりしないと、本当に心を捉えたことにはならない。まず何が言いたいのかという趣旨をはっきりさせ、そのうえでどんなトーンで伝えるのかという工夫をすることが大切。
 思考を情報化するためにはどうしたらいいか。必要不可欠なのが、無意識の意識化というプロセス。漠然とした状態の心理や、心の奥深くに埋もれている大切な思いなどを掘り起こして、はっきりと意識する。そのとき一番大切なことは、言語化していくこと。言語かすることで、思考は情報になる。
 そうなんですね。すべては、コトバにすることから始まるのです。しかも、そのコトバが鮮烈な印象を与え、心をゆさぶるものになるためには、大いなる工夫が求められるのです。そこが難しいんです。モノカキをこころざす私は、一見、簡単にみえる言語化が難しいことを、日々、実感しています。
 Tシャツをペットボトルで販売するということを考え出した著者の大胆な発想とそれを支えているユニークかつ堅実な発想にも大変刺激を受けました。
(2007年9月刊。1500円プラス税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー