弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年10月30日

松岡利勝と「美しい日本」

社会

著者:長谷川 煕、出版社:朝日新聞社
 現職の大臣が自殺したというのは、終戦の日に陸軍大臣が切腹した以外にはない。なぜ、こんな人物(といっても国民から選ばれた代議士ではありますが)が大臣に任命され、また、安倍首相(当時)が最後までかばっていたのか、まるで分かりません。世の中のことに理解できないことは多いのですが、これもその一つです。
 実は、私は農水省の地下にある売店を何回も利用したことがあります。先日、腕時計が止まったので、買いに行ったところ、地下の売店のほとんどがなくなっていました。本屋とコンビニはありましたが、農産物は扱っていませんでした。この本によると、肉も扱っていたようですが、それも一つの利権になっていたとのこと。びっくり仰天です。
 今も理容店がありますが、その奥にある畳敷きの和室で、農水省の有力幹部が酒盛りして、人脈を形成していたというのです。いやあ驚きました。
 業者の間だけでなく発注者の公共機関が主導するかそこに加わる「官製談合」は、林野庁の外部、天下り機関のみならず、林野庁自身で日常化している。
 さまざまな事実が、林野庁自身の「官製談合」を指示しているとしか言えない状況がある。選挙支援もふくめて林野庁一家が担ぎ上げてきた林野庁出身の松岡利勝議員の命令によるいわば「命令談合」としか理解できない場合もあるし、松岡議員の意中を忖度(そんたく)した「忖度談合」もあった。
 農水省は、法、道理、公正、倫理、あるいは常識といった、人間社会を成り立たせている基本原理に照らして運営されている組織ではない。松岡議員は、その環境に19年間いて、この役所の表裏をよく勉強した。
 その典型例が1994年、村山内閣のとき、ウルグアイ・ラウンド合意への対策費として6兆100億円が支出されたということ。この6兆100億円は何のためにつかわれたのか、どの作物の生産性を高めたというのか、支出明細も効果も何ら公表されていない。官僚たちの手で、好き勝手に、どこかに6兆100億円は雲散霧消してしまった。
 うむむ、なんということを・・・。とても信じられません。でも、そうなんでしょう。ひどい話です。まったく許せません。
 奇々怪々。これは魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界です。
 談合で受注したら、その会社は受注額の5〜10%を担当秘書に渡す。現金の直接手渡しで、領収書はない。金額は指示される。
 建設業者が、どことこの工事が欲しいと頼みに来ると、松岡議員は初めに100万円単位の玄関代をとる。
 死者にムチ打つようなことはお互いにしたくはありませんが、いやあ、これほどひどかったのか、改めて認識させられました。でも松岡代議士のあと、誰かが今も同じようなことをやっているのでしょうね。それまた許せません。プンプンプン、怒りがわいてきます。
 土曜日に飫肥に行ってきました。宮崎から1両のワンマンカーに乗って1時間以上かかりました。飫肥駅の前には何もありません。飫肥城まで歩いて20分ほどです。秋晴れのいい天気で、暑いほどでした。
 城下町なのに、なぜか道は真っすぐです。道端には大きな錦鯉が泳いでいました。藩主の私邸に入ると、庭にたくさんのメジロが群がっている大きな木がありました。少し大き目の赤い実を食べているのです。高さ5メートルもあろうかというキンモクセイの木があり、たくさんの黄色い花を咲かせていました。ところが、まだ例の甘い香りを漂わせていないのです。時期が早いのでしょうか。
 喫茶の看板につられて、大きな邸宅に入ってひと休みしました。予約した観光客が座敷で食事をするところのようです。コーヒーを頼むと、可憐な草花が添えられて出てきました。
 お昼はやっぱり飫肥天うどんです。熱々の飫肥天が出てきました。そして、有名な飫肥の厚焼き卵も頼みました。これが卵焼きとはとても思えません。まるでプリンです。帰りに、おばあちゃんが1人でやっている店に立ち寄り、大きな厚焼き卵をお土産に買って帰りました。
 日露戦争後のロシアとの交渉やポーツマス条約締結で外相として活躍した小村寿太郎は、飫肥の出身です。
(2007年7月刊。1200円+税)

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