弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年10月19日

越境捜査

著者:笹本稜平、出版社:双葉社
 推理小説のような警察小説ですので、粗筋を紹介するわけにはいきません。千歳空港の本屋で買って、福岡までの飛行機のなかで読了しました。えーっ、警察署って、暴力団と同じ暴力的な体質の組織だったんだー、と思いました。警察内部の派閥抗争は邪魔者は消せということで、馳星周ばりのバイオレンス物の展開です。
 背景にあるのは、警察のトップに君臨しているわずか300人ほどのキャリア組の高級幹部警察官による裏金分捕り合戦、そして、つけ足し的に東京の警視庁と神奈川県警のナワバリ争いが問題となっています。
 あっ、もう一つありました。警察と暴力団幹部とが、実は裏でよく手を結んでいるという事実です。
 いま、福岡県内では、北九州の暴力団制圧作戦が進行中のはずですが、見るべきほどの成果をあげているとは思えません。筑後地方の対立抗争事件では、一方の組長が射殺され、下部組織の組長2人が殺されているのに、警察は「自首」してきた組員以外、誰も捕まえてはいません。いったい、どうなっているんでしょうか。警察の捜査能力の低下は目を覆わんばかりのひどさだと語ってくれた知人がいましたが、まさにそのとおりです。
 警察は、公安優先ではなく、もっと刑事・交通分野を優遇し、人々が安心して生活できるようにがんばってほしいと思います。
(2007年8月刊。1600円+税)

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