弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年10月17日

ナガサキ昭和20年夏

日本史(現代史)

著者:ジョージ・ウェラー、出版社:毎日新聞社
 GHQが封印した幻の潜入ルポというサブ・タイトルがついています。オビには、「マッカーサーに逆らい、被爆直後の長崎に命がけで一番乗りした米国人ピュリツァー賞記者。60年経て日の目を見た、歴史的ルポ」となっています。なるほど、そのとおりです。
 1945年9月7日、長崎の惨状を著者が写真にとっています。荒れ果てた長崎は、まったくのゴーストタウンです。
 原爆放射能が人体にもたらす恐るべき影響について無知だった著者は、長崎に入った第一日目の原稿には、「街には痛ましいという雰囲気はない」と書いていた。しかし、日がたつにつれて、病院で被爆者を見たり医師の話を聞いているうちに意識が変わっていった。はじめ外傷もなく元気だった人が、2〜3週間後あるいは1ヶ月後に急に全身状態が悪くなって、嘔吐、下痢、腸内出血など手の施しようもなく死んでいく。
 ところが、このルポは、原爆の想像を絶する惨禍が世界に知られるのを恐れたマッカーサー司令部によって公表を差し止められた。
 そして、私は、この本で大牟田にあった捕虜収容所について、写真つきのルポを読み、初めてその実情を詳しく知ったのです。
 大牟田にあった第17捕虜収容所は1700人を収容する、日本最大の連合軍兵士捕虜収容所である。その多くは、炭鉱で毎日、8〜10時間も働かされていた。
 彼らの何人かは、長崎に原爆を投下される状況を目撃した。
 「大きなキノコのような白い雲がどんどんふくれ上がり、その中は真っ赤で、中心部分が地上まで届いているように見えた」
 「初め白い煙が噴き出してキノコの形にふくれあがり、そして突然、内部で発火した。恐ろしかった。雲が発火したようだった」
 「ぱっと光ったあと、白い雲が巨大なパラシュートの形に広がり、その中心にオレンジ色の光が輝いている。30分ほど、そのままだった」
 「大きな火の玉が空に浮いていて、どんどん大きくなっていった。30分しても、まだそのままだった。新しいタイプのガスではないかと思った」
 炭鉱で働かされていた捕虜たちは次のように語った。
 「日本軍の処遇というのは、頻繁に行われる殴打と粗末な衣服、粗末な食べ物ということに尽きる。空腹のあまり盗みを働く者もいた。苛酷な冬だった」
 「一番の困難は、坑内の湧水、低い天井の下で腰をかがめていること、重い材木を運ぶこと。いつも日本人の監督に殴られることだった」
 連合軍捕虜収容所の隣に中国人炭鉱労働者収容所があった。2年前に中国を出発するときに1236人いたのに、日本に到着して300人が死亡した。現在、50人が重病。
 この収容所では2年間に日本人衛兵により殺された者が70人を数え、加えて病死者が120人、現在の生存者は546人。生き残っている中国人の多くは骨と皮という状態である。
 大牟田には、三井亜鉛工場で働く250人のイギリス人と、炭鉱で働く700人にのぼるアメリカ人と数人のイギリス人がいた。イギリス人のほとんどは、シンガポールとフィリピンで捕虜となった。
 オーストラリア人が420人いて、うち300人は700人のアメリカ人とともに炭鉱で働いていたという記事もあります。
 アメリカ人700人とその他の連合国人1000人という表現もあります。
 700人のアメリカ人は、フィリピンで捕虜になったようです。バターンとコレヒドールで捕虜になったとあります。捕虜収容所にいた病人の多くはナチ収容所のユダヤ人と似た状態にありました。まさしく骨と皮のみの白人の若者の写真が紹介されています。
 著者は飯塚にあった第7捕虜収容所にもまわっています。ここには、アメリカ人186人、オランダ人360人、イギリス人2人が炭鉱で働かされていました。
 大牟田にあった第17捕虜収容所は日本最大の収容所であり、かつ、もっとも苛酷な収容所の一つだった。施設そのものは、ほかのところより多少よく、少なくとも年間、数ヶ月は水浴びができた。33棟の建物は、もともと三井鉱山が作業員宿舎として建てたもの、炭鉱は収容所から歩いて1.5キロメートルのところにあった。
 33棟もの建物から成る捕虜収容所が大牟田のどこにあったのか、私はぜひ知りたいと思いました。あとで、三池港の近くにあったことが分かりました。中国人収容所や朝鮮人収容所も近くにありました。
 捕虜収容所のフクハラ所長は、「収容所長として最も凶悪かつ非人間的な所長であった」ので、戦争犯罪人として有罪となり、1946年前半に絞首刑に処せられた。
 このフクハラ所長を取り上げた本を以前に読んだような気がします。題名も何もかも忘れてしまいましたので、改めて見つけて読もうと思います。
(2007年7月刊。2800円+税)

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