弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年10月12日

食糧争奪

社会

著者:柴田明夫、出版社:日本経済新聞出版社
 この本を読むと、日本は、もっと食糧自給率を高めるべきだと痛感します。
 日本では余剰感のあるコメだが、世界的にみると需給が引き締まり傾向にあり、将来、楽観視はできない。
 現在、穀物メジャーは、伝統的な穀物商社のカーギルとバンゲ、搾油業や小麦製粉業などの食品加工業を由来するADM、コナグラの大手四社。
 古いデータだが、1997年時点で、これら四社にコンチネンタル・ケレインを加えた大手五社の米国の穀物流通のシェアは、産地集荷段階で3割、内陸部の中間流通段階で5割、輸出段階で7割、一次加工段階では5割を占めていた。
 世界に栄養不足人口は8億5000万人いると推計されている。
 世界の穀物市場では、2000年を境に供給過剰から供給不足へと需給構造の転換がすすんでいる。旺盛な需要に供給が追いつかず、結果として、世界の穀物在庫が取り崩されているためだ。この背景には、中国やインドなどの人口大国が本格的な工業化の過程に突入し、猛スピードで日・欧・米の先進諸国へ追いつこうとしていることがある。
 もはや世界経済を牽引しているのは、1990年代までの日・欧・米の先進国(人口8億人)ではなく、人口30億人のブラジル・ロシア・インド・中国である。
 2003年時点で、遺伝子組み換え作物の栽培比率は、大豆で81%、トウモロコシで40%に達している。
 日本の農家戸数は1980年の466万戸から2005年に293万戸へ4割も減少した。農地面積は546万ヘクタールが471万ヘクタール(2004年)へ14%減少した。農業就業人口は506万人から259万人(2003年)へと49%も減少した。
 日本の食糧自給率は40%というが、実は、日本の畜産物はその飼料のほとんどを海外に依存している。だから、注目すべき自給率は穀物自給率の28%。これは他の先進諸国と比べて異常に低い。アメリカは128%、フランス142%、ドイツ122%である。イタリア62%、イギリスでも70%である。
 これでは日本人は餓死寸前みたいなものではありませんか。この面でもアメリカ頼みでは日本人は将来を生きていけないのです。
 イギリスはかつて日本並みに低かった。一時は400万ヘクタールだったイギリスの耕地面積は、1800万ヘクタールにまで拡大された。これによって食糧自給率が向上した。飽食・日本の将来を不安にさせる警告の書です。石油を食って生きていくことは出来ないのです。自動車をつくって外国に売り、食糧は外国からお金を出して買えばいいという発想は明らかに誤りだと思います。
 先日、札幌に行ってきました。心の優しい岩本勝彦弁護士の紹介で行った小料理屋(「しんせん」)で、シャケの心臓(ハツ)の串焼きを初めて食べました。北海道は美味しいものがたくさんあります。やっぱり産地が分かっているものを安心して食べたいですよね。
(2007年7月刊。1800円+税)

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