弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年9月27日

石油、もう一つの危機

社会

著者:石井 彰、出版社:日経BP社
 今またガソリンが値上がりしています。リッター140円台です。どうして、こんなに値段が上下するのでしょうか。さっぱり分かりません。
 2003年までの価格の3倍にも高騰した。ところが、イラン原油が全面的に輸出停止になっても困らないほど、世界の石油消費量の3年分はあった。では、中国の石油需要が急増したためなのか。それも、否。
 ピークオイルが近づいたためか?
 ピークオイル論というのは、世界の石油生産能力が数年以内に地質的限界、資源量的限界に達してピークを迎え、あとは秋の日のつるべ落としのように、運命的、必然的に凋落していくという議論である。ただし、これははじめに1990年までにピークが来ると言っていたのが、2007年まで、いや2010年までと、何回も延びのびになっている。
 いま、公的機関でも業界でも、2015年より前のピークアウト、いや、2030年より前にピークアウトすると予測しているところはない。
 では、なぜ石油価格が高騰しているのか?
 原油先物市場が完全に金融市場にのみ込まれて金融商品化し、そのため需給実態を反映しない過度な価格高騰を来した。これは、石油市場の過去の歴史にはない、21世紀に入ってはじめて現れた現象である。
 価格上昇の主導権は、プロの投機家から、年金基金を主体とする巨額資金の素人投資家に変化した。
 現在、日本の発電用エネルギーのうち、石油はわずか1割。世界でも6%ほど。発電による二酸化炭素の発生源は大半が石炭である。
 世界的にみて、石油需要は、6割が自動車、航空機、船舶等の交通用需要である。発電用や工場・商業施設等の熱源、石油化学の原料などは、全部あわせても4割。
 石油は、もはや産業の米や経済の血液ではなく、交通・輸送の血液に大転換している。
 世界的に見たら、今や「産業の米」は、石油ではなく、天然ガスである。一次エネルギー消費に占める割合でみると、日本では石油が依然として最大で5割を占める。天然ガスはわずか13%ほど。しかし、先進諸国では、石油が40%、天然ガスが25%を占めている。
 かつては、シェルやエクソンなどの七シスターズが世界の石油生産と貿易を牛耳っていた。今や、新セブン・シスターズとは、サウジアラビア、ロシアのガスプロム、中国のCNPC、マレーシアのペトロナス、イランのNIOC、ブラジルのペトロブラス、ベネズエラのベドヴェサの7つの国営石油会社をさしている。
 メキシコとサウジアラビアは、外資をまったく受けつけず、資源資源ナショナリズムでいく。今日の石油をとりまく情報の一端を知ることがことができました。日本の石炭も、もっと大切にすべきだったと、つくづく思います。
 芙蓉の木いっぱいに艶やかな淡いピンクの花が咲き、見るだけで心が和みます。酔芙蓉の花も咲いています。午前中は純白の花が、午後になると次第に赫く染まっていくさまは、まさしく酔人の顔そのものです。エンゼルストランペットも咲きはじめました。細長いトランペットのような黄色い花がたくさんぶら下がっています。チューリップの球根を植えました。とりあえずは、50個ほどです。12月まで、折々の日曜日に植えています。そろそろヒマワリを刈る季節にもなりました。
(2007年7月刊。1600円+税)

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