弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2007年9月26日
日本人だけが知らないアメリカ世界支配の終わり
アメリカ
著者:カレン・ヴァン・ウォルフレン、出版社:徳間書店
カール・マルクスに対する支持が再び広がりつつある。イギリスのBBC放送は、2005年に史上もっとも偉大な哲学者は誰なのかについて世論調査を行った。その結果、最高の票数を獲得したのは、ほかでもないカール・マルクスだった。
マルクスは再び、多くの人々が直面する現実を理解するための指針となっている。
ひゃあ、そうなんですか・・・。私も大学生のころ、マルクスの本をたくさん読みました。その深い洞察力に、ただただ感嘆していました。
マルクスの哲学は、社会の現実、とりわけすべてを包含する政治経済における現実を説明するものだった。そして、これは人類すべてにとっての真実であるとされている。
マルクスは教条的であるが、彼の思想は『資本論』にとどまらぬおびただしい著作に展開されており、その視点は世界を認識するうえで、いまなお優れている。マルクスのもっとも重要な貢献とは、現実にかんする思想において主流となるものは、支配エリート層、すなわち経済的に優位な立場にある人々によって形成され、維持されるという指摘だろう。
うむむ、なるほど、そのとおりですよね。日本のテレビだって、自民党と金持ち礼賛であふれています。
アメリカは、もはや世界の覇権国ではない。もはやアメリカは覇権国として世界に君臨してはいない。なぜなら、覇権というのは、軍事力だけでは成り立たない。それは、強力な国家の存在を受け入れることから発声する恩恵をこうむっていると理解している国々からの、集団的な尊敬の念に依存している。もちろん、アメリカは軍事的には世界最強の国である。しかし、皮肉なことに、このような強大な軍事力を備えていることは、同時にそのパワーの衰えをも示している。
アメリカがいかに無能で無力になりつつあるかが顕著にあらわれたのが、イラク侵攻と占領だった。アメリカはイラクを占領していると言われているが、現実にはアメリカはイラクを支配することができないため、占領しているとは言いがたい。占領というより、不法占拠という言葉のほうが適切だろう。
いやあ、この点も指摘されているとおりですよね。私はまったく同感です。
9.11のあと、ブッシュ政権は恐怖をあおった。一般的に言って、政治家たちは恐怖におののく有権者を歓迎する。なぜなら、恐怖に凍り付いている人々はコントロールしやすく、権力者に容易に従うから。ブッシュ政権は、アメリカでもっとも富裕なわずか数パーセントの人々のみに恩恵を与える減税や、大統領権力の拡大といった重要なアメリカ右派の政治的プランの一部を推進するとき、恐怖をもって人心を操る政治手法を利用した。
このような手法が現実に可能となったのは、アメリカの一般社会が無知だからである。アメリカの人々は、常にマスメディアからの大量のメッセージとイメージを浴びている。だが、それらの中で、真の生活、真の政治、世界の新なる発展に役立つものは実に少ない。アメリカの人々が浴びているのは、ほとんどがエンターテインメントである。
アメリカ人は、自分たちの国家こそが最高で、偉大であり、最も成功をおさめたと考えている。そして、アメリカ人は歴史を知らない。アメリカの外交エリートたちというのは、過去の栄光の影のような存在だ。
テロに対して闘いを挑むという思想はばかげている。なぜなら、テロというのは手法を示す言葉であって、われわれが闘いを挑むことのできる組織などではないから。テロは組織ではないから、テロとの戦いに終わりがあるはずもない。テロリストの最後のひとりを抹殺しても、おそらくもっと多くのテロリストが新たに誕生することだろう。
テロに対する闘いという虚構が危険なのは、正義を求めて対立的な姿勢をとるあらゆるグループが、国際テロリストというカテゴリーに組み込まれてしまう危険があるからだ。
アメリカは大金をつぎこんで捜査した結果、アルカイダのメンバーであると確認された者を、ひとりとして見つけることができていない。
よほどすばらしい映画やニュース番組を除いて、テレビをほとんど見ない。なぜなら、テレビは重要な情報をほとんど与えてくれないからだ。情報源として、テレビは役に立たない。しかし、その影響力は、きわめて大きい。
ふむふむ、テレビを見ないという点では。私もまったく同じです。私にとってはテレビを見る時間があるなら、本を読みます。同じ時間で得られる情報量は断然ちがいます。
投機家はアンテロープ(羚羊)の群れに似ている。アンテロープは危険を察知すれば、すぐさま全速力で同じ方向へと駆け出す。これと同じように投機家たちも、お金がふんだんにあると見るや市場に殺到し、わずかな変化が起きれば、たちまち市場からどっと逃げだし、市場に壊滅的な打撃を与える。
そうなんです。投機って、詐欺と同じです。要するに、庶民は欺され、お金をまき上げられるだけです。証券会社と大銀行がもうかるだけです。
先進諸国によって推進されてきたグローバリゼーションというのは、ある種の奇妙な帝国主義なのだと結論づけることができる。帝国主義を生み出したのはアメリカであるが、それを支持してきたのは、冷戦時代の同盟国であるヨーロッパや日本、そしてそれたの国々の大臣やマスコミの人間、そして政治経済界のエリートたちだった。最大の利益を獲得したのは誰なのか?ほとんど企業幹部、とりわけアメリカの企業幹部だ。
グローバリゼーションは、ひところ大いにもてはやされましたが、要するにアメリカ大企業の幹部に不当なもうけを保障しただけでしたね。問題の解決には何も役に立っていないどころか、かえって、環境汚染や貧困の問題を深刻化させました。
アメリカは世界最大の債務国であり、アジアとヨーロッパからの資金供給に過度に依存している。アメリカは巨額の経常収支赤字をかかえている。アメリカは、その差が毎年1100億ドルの割合で増えている。その額は、2005年には8000億ドル、2006年度には、一日平均40億ドルのお金を毎日借りていた。この状況をいつまで続けられるのか誰にも分からない。しかし、いずれ終わりが来るだろうという認識では、みんな一致している。アジアからの資金供給がなければアメリカ経済は破綻する。
なーるほど、こうみてみると、アメリカが近いうちに行き詰まるのは必至ですよね。
(2007年7月刊。1600円+税)