弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年9月12日

インド世界を読む

アメリカ

著者:岡本幸治、出版社:創成社
 1820年に、世界におけるGDPは、第一位の中国(清)が28.7%で、インドは 16%と第二位。フランスは5.4%、イギリス5.2%、ロシア4.9%、日本3.1%。当時のインドは日本の5倍以上の経済力を誇っていた。
 インドの言語は312とか800以上とも言われている。小学校では、3言語政策がとられている。3言語とは、英語とインド公用語とその地域の公用語である。そして、エリート層の共通言語は英語だ。
 インドの宗教人口は、ヒンドゥ教81.4%、イスラム教12.4%、キリスト教  2.3%、シーク教1.9%、仏教0.8%、ジャイナ教0.4%。
 ヒンドゥ教徒は微減、イスラム教徒は微増。インドの人口は11億人台であり、そのうちイスラム教徒が1億3000万人いる。世界有数のイスラム大国でもある。
 ムガル朝の太祖であるバーブルは、中央アジアのモンゴル族系の出自である。アラビア人の歴史家がモンゴルをムガルと呼んだので、ムガル朝という名で知られるようになった。
 マハトマ(偉大なる魂)・ガンジーの最大の業績は、それまで都市中間層に片寄っていた民族運動組織を全国に支持基盤をもつ大衆組織、民族を代表する運動体に脱皮させたことにある。彼自身は、イギリスに4年間留学したエリート知識人であったにもかかわらず、インドの多数が居住する農村に注目し、都市インテリが好んで使用する英語ではなく、民衆に土着の言葉で語りかけたこと、そして会議派支部組織の役員は天下りに指名するのではなく、支部会員の選挙を通じて地元で人望のある者を選ぶというやり方を採用した。
 独立当時のインドは、識字率がわずか16%だった。就学率は、小学校で35%、中学校は9%、高校は5%にすぎなかった。
 今や、インド経済の発展は、印僑の存在を抜きにしては語りえない。印僑とは、外国に移り住んでその国の国籍を取得している人々や、インド国籍を残しつつ外国で研究・貿易・生産に従事する人々のことを指す。
 印僑はアメリカに168万人、カナダに31万人、イギリスに105万人いる。
 新たな印僑は知的コミュニティーを形成している。IT分野のほか、文学や経済学でも世界水準への貢献度は高い。経済界への進出が目立ち、政界進出もはじまった。
 最近の印僑は、インド国内の中流以上の家庭出身である。在米印僑の子弟の学歴は高く、印僑の子弟の7割前後は大卒の学位を取得する。これは全米平均の21%の3倍をこす。
 カリフォルニアのシリコンバレーでは30万人の印僑が就業しており、全米に5000人の印僑の大学教授が教壇に立っている。
 アメリカにいる印僑の家庭の収入は、全米平均の2倍、年に6万ドル。シリコンバレーで働く技術者の平均収入は年間30万ドル。
 インド本国への送金は急上昇中で、1994年に78億ドルだったのが、2003年には220億ドル。10年間で2.8倍にふくれあがった。
 インドのバンガロールには、77もの工科大学があり、3万人の学生を毎年送り出している。インド企業に働くソフト技術者は34万人。これはアメリカに次いで世界第二位。大学卒の技術者は全インドで毎年10万人をこえる。
 ソフトの売上げは、輸出が国内よりはるかに大きい。北米60%、ヨーロッパ20%、日本は4%。
 イギリスの国鉄にかかる電話は年間5000万件あるが、その半分はインドでインド人が英語で応答している。
 アメリカにいる外国人留学生56万人のうち、インド人は8万人。7人に1人を占め、断然第一位。中国人より多い。
 最近、インド人が積極的に移住しているのは湾岸諸国である。とくにアラブ首長国連邦である。これは、石油関連産業への出稼ぎが目的である。
 最近のインドの実情をいろいろ知ることができました。
(2006年10月刊。800円+税)

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