弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年7月 5日

捜査指揮

著者:岡田 薫、出版社:東京法令
 私と同世代の元警察キャリアの人が刑事警察官の身につけるべきポイントを本にしたものです。私の知らなかった言葉をいくつか知りました。
賞詞・・・警察職員として多大な功労があると認められる者に対する表彰。ランクが高く、特別昇給を伴うことも多い。
賞誉・・・表彰の一種で、賞詞よりランクが下がる。
手口原紙・・・犯罪手口の分析が犯人割り出しに有効と考えられる罪種=手口犯罪(強盗、窃盗、詐欺、性的犯罪、殺人等)の被疑者を検挙したときに、作成する被疑者の手口に関する情報を記載した原紙。今はコンピューター化されているので、手口記録と呼ぶ。
可惜身命・・・あたらしんみょう。誘拐事件捜査などでは被害者の命の安全が最大の目的である。一番に被害者を無事に救出しなければならない。そのうえで犯人を逮捕する。
牛の爪・・・元から割れている事件のこと。
 組織では、上司よりも部下のほうが、その担当分野の専門家であり、精通しているということはよくある。そういう時期をどう乗り越えるかが勝負の分かれ目である。そのときには、その人より多く働くことしかない。その人たちに、あの警部は、ど素人だけども、少なくともオレよりは仕事をしている。オレよりは努力をしていると思わせるようにしなければ誰がついてくるだろうか。
なーるほど、たしかに、そのとおりでしょうね。努力して乗りこえるしかありませんよね。
 著者は打つ手に困ったときにどうするか、次のことを提起しています。
 情報を見直す。何回も何回も見直すと、何かのヒントが出てくる。
 常識的になっていることを疑う。ただし、捜査資料をよく読みこまないと疑いというのはなかなか出てこない。
 多角的な目で捜査資料を見る。捜査資料を別の発想で見ていくことが大切である。
 ポイント(流れ)をつかむ。
 実は、この本を読んで、一番、私の心に響いたのは次の指摘でした。
 決断の本質というのは捨てることにある。捨てられない人は決断できない。
 うーむ、なかなか含蓄のある言葉ですよね、これって・・・。
 決断力があるといって、何でも捨ててしまう人は困る。あまりにも思い切りがよすぎてもいけない。最高幹部にとって、もっとも重要な資質は簡単に決断しないことだ。
 さらに、常識的な知識・経験があったうえで、固定観念にとらわれないことが大切だ。
 さすがに、25万人もいる警察という巨大な官僚組織のトップに立った人の言葉には深みがあり、感心しました。

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