弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年5月25日

一所懸命

日本史(中世)

著者: 岩井三四二、出版社:講談社
 この本を読んでいるうちに映画「七人の侍」をついつい思い出してしまいました。なんだか、とても似たシチューエーションなのです。
 ときは戦乱に明け暮れる戦国時代。織田勢が大軍を仕立てて美濃の国へ攻め入ってくるという。地侍は領主の命令で小者を従えて出仕しなければならない。たとえば騎馬侍二騎、槍足軽二人、指物持ち一人、弓持ち一人、徒歩立ち二人の合計八人を出す必要がある。大変なことだ。
 他国の軍勢が侵入してくれば、どのようなひどいことになるか。
 米や麦を盗む、女を犯すぐらいは当たり前のことだ。盗むものがなければ、刈り入れ前の稲を刈ったり、麦や野菜を踏みつけてめちゃくちゃにするなどの嫌がらせをする。負けて捕らえられて者は、奴として売り飛ばされるし、軍勢が去る前には家を焼いたり、井戸に糞を撒いたりする。それは、自分自身も合戦に参加すればやってきたことだ。
 この本は合戦に否応なく参加させられた雑兵の眼で描いています。なるほど、戦国時代の合戦というのはこんなものだったんだろうなと思いました。
 織田信長や秀吉など、トップに君臨する英雄だけに目を向けるのではなく、それを底辺で支えていた人々の気持ちを考えてみることに目が向きました。読みものとしても大変面白く出来ていますが、歴史の見方に目が開かされた思いがしたという点で、私はこの本を高く評価したいと思います。

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