弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年4月19日

ITとカースト

インド

著者:伊藤洋一、出版社:日本経済新聞出版社
 インド・成長の秘密と苦悩。こんなサブ・タイトルがついています。
 インドの離婚率は1%。えーっ、ウソでしょ・・・。インドの結婚は、お見合いの比率が高く、80%に近い。インドでは結婚が神聖視されていて、未婚の男女に対する管理はとても厳しく、結婚前の男女関係は非常に保守的。結婚相手は基本的に親が決める。だから、ラブ・レターという言葉はインド社会では否定されている。
 えーっ、そうなんですかー・・・。インド映画を見て、なんだか恋愛至上主義のような気がしていたのですが、まったくの誤解だったようです。
 インドでは結婚後の浮気も、事実上不可能だという。たとえば、インド人の男女がホテルに泊まるときには、身分証明書を呈示して夫婦であることを立証しなければならない。
 ヒンズー教では、生きている間はカーストで身分も職業も変えられない。しかし、現在のカーストでの人生の結果によっては、次の生など、来世で高いカーストに上がることができる。つまり現世の身分の低さは、最初からあきらめ、死後に希望がもてる仕組み。現在のカーストは過去の生の結果であるから、今の置かれている環境を受け入れて、人生を生きるべきだ。こうなる。
 選挙のとき、現世で大地主に奉仕すれば、来世では良いカーストに生まれ変わると、今でも多くの人が信じている。これって、支配者にはものすごく都合のいいものですよね。
 父親と母親とが違うカーストから出ている場合を含めて、誰がどの階級にいるのかと決めつけるのは実に難しい。
 カースト以下の人々は一般にアンタッチャブルと呼ばれる。その人々は自分ではダリットと呼ぶ。ダリットとは、壊された民という意味で、2億人いる。
 インドの最大の財閥はパルシーと呼ばれる。タダ・グループはパルシーのなかのグループ。パルシーとは、ヒンズー語で、プルシャという意味。
 シーク教徒は、全人口の2%しか占めないが、インドでは、その存在感は大きい。
 ヒンズー教徒は頭にターバンなど巻かないが、シーク教徒は頭髪やヒゲをそらない掟をもつため、ターバンを頭に巻く。シーク教はイスラム教の影響を受けてヒンズー教を改宗した宗教であり、カースト制を否定し、人間の平等を強く訴える教えをもつ。軍人や政界にシーク教徒は多いが、ビジネス・交通運輸の分野でも存在感は大きい。
 インドはあれだけの人口(11億人)をかかえていながらオリンピックでほとんどメダルをとっていない。インドは個人競技に弱い。
 たとえインド最下層の階級出身であっても、今までカースト制度では分類のなかった ITの分野には挑戦できる仕組みができあがっている。
 アメリカにはインド系の人々が240万人いる。25歳以上のインド系の67%が大学卒以上の学歴を有し、世帯収入の平均は6万7000ドル。
 インドでIT事業がすすんでいるのは、アメリカとの時差が12時間ほどあることもプラスしている。アメリカ人が寝ている間にコンピューターへのデータ入力や処理ができたら、朝までにアメリカに情報をふまえたアドバイスができるだろう。
 インドのIT系新卒者は、日本人技術者の3分の1の給料で働いている。
 インドって、ホント不思議な大国です。

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