弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年4月 5日

その記者会見、間違ってます

司法

著者:中島 茂、出版社:日本経済新聞出版社
 記者会見のすすめ方を具体的に手ほどきする実践的な本です。経営者や税務担当そして弁護士も読んで役に立つ内容になっています。
 危機管理広報において世間に仕えるべきポイントは三つ。謝罪と原因究明と再発防止。このなかで原因究明がもっとも大切。
 危機管理広報で最大の注意を要するのが、ウソをつかないこと。
 間違った報道をされたときには、間違った記事を書いた記者に対してきちんとした説明を尽くすこと。
 取材には極力応じること。記者も人の子、広報担当者が汗だくで必死に説明している姿には心打たれる。どのような状況でも、人間の誠実さは伝わるもの。
 訴訟が起こされたとき、訴えられた会社が「訴状をまだ見ていないのでコメントできない」というのはよくない。「訴状はまだ受けとっていないが、法に従って管理してきたものと考えており、そうした点をご理解いただくために誠実にお話し合いを続けてまいりました。それだけに今回の提訴に至ったことは残念です。今後は、以上のような当社の立場を法廷で主張してまいりたいと考えています」こんなコメントが望ましい。
 うむむ、なるほど、このようにしたらいいんですね・・・。
 記者会見には企業のトップが出るのが原則。弁護士は記者会見に同席すべきではない。早くも法的責任が問題になっているように誤解される恐れがある。
 記者会見の前にはリハーサルをする。練習に勝る不安解消策はない。想定問答集をつくる。記者が一番ききたいのは何かを考えて問いをつくること。
 記者会見の場所はゆったりと余裕のあるスペースとする。狭いところでは、緊迫した精神状態になりやすい。会場には記者と別の出入り口をもうけておく。
 答弁するとき、メモは最小限とし、Q&A、想定問答集がカメラでとられないようにする。説明するテーブルにはテーブルクロスをかけて足元は隠す。
 記者会見では見てくれが成否を決める。入場する前に身だしなみをチェックしておくこと。ダーク・スーツ、落ち着いた柄のネクタイ、スーツのボタンはかけておく。高級腕時計はしない。
 記者会見の模様は会社もVTRでとっておく。記者団を軽く見てはいけない。
 謝罪するときは、お辞儀した姿勢で5秒間は静止する。会見場に3人で出るときには、一斉に頭を下げる。101、102、103、104、105と100をつけて心の中で数えると、5秒間になる。お辞儀の最後で笑わない。最後まで緊張感をもつ。
 複数の会見者がいるときには、質疑のなかで、絶対にお互いの顔を見合わせない。万一、確認したいことがあっても、堂々と正面を向いたままいう。
 机の上でいろいろ手を動かさない。低い声でゆっくり話す。会見者は、どんな窮地に立たされても、いやな質問を出されても、誠実な話し方を崩してはいけない。自分たちの都合で、記者会見を途中で打ち切ってはいけない。
 私も弁護士会の責任ある立場にいたとき、記者クラブに一人で出かけて謝罪のための記者会見をしたことがあります。日頃、顔なじみの記者もいましたが、うって変わって厳しい質問が相次ぎました。私なりに精一杯こたえるようにしましたが、詳しい事情が私には分からないことも多く、そういうときには、すみません、その点は分かりませんとはっきり言いました。なかなか記者は解放してくれませんでしたが、私のほうから席を立つことだけはしまいと思い、幹事社の記者が終わりましたと言ってくれるまで、じっとカメラのライトに照らされて坐っていました。2回とも一人で45分も集中砲火をあび、終わったときにはさすがにぐったり疲れました。

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