弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年2月 9日

ハーバードMBA留学記

アメリカ

著者:岩瀬大輔、出版社:日経BP社
 東大在学中に司法試験に合格し、卒業したあとハゲタカ・ファンドと呼ばれるコンサルタント会社に就職し、それからハーバード・ビジネススクールへ留学した青年の体験記(ブログ)を本にしたものです。あのハーバードで成績上位5%の優秀性だったというのですから、すごい秀才であることはまちがいないのでしょう。それでも、そんなに優れた日本の著者が、ビジネススクールへ入っていかに金もうけをするかしか念頭にないかのように見えるのは残念なことだと、つくづく思いました。
 社会的弱者の存在に温かい目を向け、その人たちとの連帯をどう考えていくのかを自らの課題とする。また、自然環境の保全に身を挺するなかで自分の生き甲斐を探る。そんな方向に日本の優秀な若者の英知を向けられないものなのでしょうか。
 お金は所詮はお金。あればあるだけムダづかいするという人のなんと多いことでしょう。
 前にアメリカのMBAは、実は企業にまったく役に立っていないと厳しく批判したMBA教授の書いた本を紹介しました。実は、私もまったく同感です。
 アメリカのMBAについて私が反感を抱くのは、MBAを卒業して経営者として成功した人たちの報酬が、とてつもなく高いという点です。著者も、この点については、次のように批判しています。
 それにしても、アメリカの経営者の報酬は高すぎる。社長が就任して数年たつと数千万ドルから1億ドルの報酬を普通に受けとっている。アメリカも決して昔からこうだったわけではない。アメリカの底辺労働者は日本と同等かそれ以下の給料しかもらっていない。それなのに、トップは100億円の報酬をもらっているなんて、これだけでもアメリカとアメリカのMBAが飢えた野獣を放置しているような野蛮な国だということが分かる。
 著者は日米の医療サービスの質を次のように比較しています。
 お金持ちにとっては、アメリカが圧倒的に上。しかし、普通の人や低所得層にとっては、日本は夢のような国だ。日本の医療は、全国津々浦々、所得に関係なく医療サービスを低コストで提供してきたという点で素晴らしい。
 ホント、そうなんです。ところが、小泉・安倍と歴代の自公政権は日本の良さを破壊し、アメリカ並みに引き下げようとしています。本当に困った連中です。
 この本は、日本の学校給食は世界に類のない素晴らしい制度だと絶賛しています。幼稚園でピザとコーラを食べているアメリカの食生活の貧しいことといったらありません。
 アメリカでハリケーン・カトリーナが襲ったとき、真っ先に逃げ出したのは営利の病院スタッフであり、最後まで残って市民を介護し続けたのは非営利の病院だった。なーるほど、ですよね。
 なんでもお金が万能。そんな生き方を礼賛するMBAって、本当に人間社会に必要なのでしょうかね・・・。

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