弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年1月26日

テスタメント

アメリカ

著者:ジョン・グリシャム、出版社:新潮文庫
 出だしからあっと言わせます。
 世界的な大富豪が自分の書いた遺言書を前に3人の精神科医から質問を受け、その様子はビデオで撮影されています。大富豪はまったく正常です。ところが、精神鑑定が終わったところで、その大富豪は別の自筆遺言状を取り出し、署名するのです。そして、そのまま窓の外へ飛びおり自殺します。うーん、なんということ・・・。
 小説は、この最後の遺言書が有効かどうか、有能なアメリカの弁護士たちが何組も登場して、この自筆遺言状を無効のものにするため策略を練るところから展開していきます。
 3人の精神科医を解任し、大富豪は実は精神的に正常ではなかったという召使いの偽証が成功するかのように思えます。何回も何回もリハーサルを重ねて、完璧に嘘を塗り固めようとします。しかし、所詮、嘘は嘘。たちまちバケの皮をはがされてしまうのです。アメリカの有能な弁護士たちは、まさしく顔が真っ青。
 アメリカの民事裁判のすすめ方は日本とはかなり違うようです。正式な事実審理の前に裁判所で証人調べがあるのです。ここで相手方の弁護士の反対尋問にさらされます。そこをパスできなければ、次へ進みようがないわけです。
 アメリカの弁護士にも、もちろん守るべき弁護士倫理があるわけですが、倫理を足蹴にして高額の弁護士報酬を得ようと狂奔する醜い弁護士たちが描かれています。これは、あくまでも小説です。でも、日本でも身につまされる話になってきましたね。

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