弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2007年1月23日
特捜検察官
司法
著者:姉小路 祐、出版社:講談社ノヴェル
司法試験をめざしていた三人組のうち、一人だけ合格し、検事になった。もう一人は副検事になり、あと一人はシンクタンクで働いている。その副検事が検察庁内部の派閥抗争に巻きこまれて特命を帯びてスパイの役をさせられます。
現場の人間あってこその検察庁なのに、重視されるのは検察行政上がりの者。歴代の検事総長の経歴をみたら歴然としている。ロッキード事件の主任検事だった吉永祐介という特捜部出身の検事総長は例外的。大半は検察行政出身の官僚検事がなっている。検察庁と法務省を往復しながら、順調に出世していった者が検事総長になる。苦労の多い現場の検事は報われていない。
警察では報われないノンキャリアと支配するキャリアという構造がある。しかし、検察庁には、報われないキャリアと支配するキャリアがいる。検察行政に携わる官僚検事のほうが、他の省庁の官僚との横つながりがあり、政界とも太いパイプを持っている。
たとえば、法務省にいる検事は、法務大臣の国会答弁を支える仕事もする。法案作成の手伝いをすることもある。つまり、法務省の検事は内閣の一員なのだ。政治家と顔見知りにもなるし、お互い様といった関係になる。
ところが、現場の検事はそういうしがらみがない。政治家の不正を見つけると遠慮なく摘発する。政界はそういった現場の検事を歓迎したくない。
公安派はホワイト・カラーであり、特捜派はブルーカラーだ。
公安派は東大・京大の出身者が大半を占める。特捜派は私学・地方国立大学の出身者が多い。特捜派の検事が特捜トップの検事総長になる可能性は低い。
公安派対特捜派という図式とは違う第三の派が誕生した。口の悪い公安派は国策派と呼ぶ。三者、三竦みの状況だ。権力機構というのは、どうしても覇権争いをしてしまうものだ。この三者構造って、ホントのことなんでしょうか・・・。
特捜検察があるから、日本の政治は腐敗が防げている。
大変な自負心ですが、果たしてそうでしょうか。
特捜部は企業と違う。あまり成果をあげないほうが、むしろ国にとっては歓迎すべきことだ。うーむ、果たしてそうなのか・・・。
国策派は、大蔵省・日銀の不祥事をきっかけに、公安派から枝分かれして急成長した。公安派にとっては、国策派は司法官僚という同じ穴の狢だ。検察が国策捜査をするための道具となってしまってはいけない。
特捜派が現場部門を掌握しているが、公安派は管理部門を支配し、人事権を手にしている。というのも、公安派には特捜派にはない情報収集力がある。手足として、公安調査庁を使えるし、公安警察とも強いパイプがある。その情報収集力を検察内部に向ければ、検事たちの交友関係から、仕事上のミスやトラブルなどもつかめる。だから人事権を手にしているのだ。
小説に名を借りた検察庁内部の派閥生態の解説本といったおもむきの本でした。どこまであたっているのでしょうか。
最近、副検事への昇任希望者や特任検事へなりたがる人が減っているという話を聞いたことがありますが、本当でしょうか。どなたか教えてください。
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