弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年1月18日

新・富裕層マネー

社会

著者:日本経済新聞社、出版社:日本経済新聞社
 日本に金融資産1億円以上の富裕層は131万人。全世界の富裕層(770万人)の 17%を占める。
 5億円以上のスーパーリッチは6万世帯。1億〜5億の大衆富裕層は72万世帯。これは、遺産相続による人が大きな割合を占めている。
 居住目的の不動産を除いた純資産で100万ドル以上の日本の富裕層は134万人、これは世界第2位。1位はアメリカで250万人。3位はドイツの74万人。
 スイス銀行が相手にするのは、金融資産5億円以上の人。
 グロソブという言葉を初めて知りました。グローバル・ソブリン・オープンというものです。日本に比べて高利まわりの欧米の国債を中心に運用し、投資家に毎月、分配金を還元します。購入者は100万人をこえているヒット商品だということです。
 団塊世代が退職するのは間近かだ。1人あたり平均2000万円として、年間15兆円。3年で47兆円。その前後をふくめての80兆円が、いま狙われている。団塊世代は既に110兆円をもっており、あわせると団塊マネーは150〜190兆円になる。
 ひゃあー、そんな金額になるんですか・・・。
 銀行預金に利子がつかない現在、投資信託が注目されているという。銀行が投信販売に熱心になるのは、販売手数料だけでなく、預かり資産に比例して信託報酬が見込めるから。
 たとえば、いちよし証券では、信託報酬が前年同期比38%増の19億円となった。これは、グロソブの預かり資産が400億円になったことによる。
 しかし、投資信託の基本は、元本保証のないこと。これを見逃して投資すると、痛い目にあう。投信ビジネスは証券会社にとって三度おいしい。販売手数料、代行手数料、委託手数料が入るから。あのグリコ以上のおいしさを証券会社がひとり占めするなんて、そんなことが許せるでしょうか・・・。
 不動産をふくむ資産が1億円を超す富裕層の日本人は300万人をこえる。彼らは遺言書を作成する。信託協会に加盟する銀行は4万8000通の遺言書を保管している。
 信託銀行の扱うリバースモーゲージというのがあるそうです。私は知りませんでした。自宅を担保とし、そこに住み続けながら年金のように一定額を受け取り続けるというものです。利用者が死亡したときなどに自宅を売却して元利金を一括返済することになります。7000万円の評価のある自宅を担保とし、毎年180万円を受けとれたというケースが紹介されています。果たして利用者にとってのリスクはないのでしょうか。どなたか、教えてください。
 信託銀行は、たとえば3000万円を預けている顧客に対しては、名医の紹介や金持ち向けのパック旅行紹介のサービスをしているそうです。でも、パリのコンドミニアムを紹介するというサービスがあるというのには笑ってしまいました。私は別荘も持ちたくありません。旅行先では、すべてあげ膳、据え膳でいきたいのです。炊事・洗濯、すべて自己責任、だったら日常生活そのものではありませんか。
 5%の利まわりがあるという宣伝文句だったのに、実は、信託報酬など差しひかれると1%にしかならないという。あくまでも信託銀行がもうかる仕組みになっているということです。
 金融資産が1億円あるということは、1億円しかないということ。信託銀行をふくめて銀行や証券会社にとっていいカモになる危険性はきわめて大きいのです。
 いや、証券会社などに頼らずインターネットで直接取引をしてもうけるのだ、そういう人がいるでしょう。でも、そんな人はパソコンの画面と24時間にらめっこしていなくてはなりません。仮に1日で10万円もうけたとしても、それってむなしくありませんか。四季折々の移り変わり、人間の生きざまの変わり方を議論するよりなにより、パソコンの画面をじっと、何時間もみつめ続けるなんて・・・。貴重な人生時間のムダづかいの典型ではありませんか。人生にはお金に代えがたい、大きなものがある。それは、たとえば親友です。なんでも話せる友だちって、お金なんかでは買えないでしょ。
 それにしても、なんだか欺しのテクニックがどんどん広がっているようで、怖い世の中です。同じ団塊世代のみなさん、お互いに気をつけましょうね。

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