弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年1月17日

大統領の品格

アメリカ

著者:宮本信生、出版社:グラフ社
 外務省に入り、キューバやチェコの大使も歴任した元外交官が、ブッシュ大統領を厳しく糾弾しています。
 この本のオビには、元外務事務次官で駐米大使もつとめた人が推薦文をのせています。日本にも心ある外交官がいたことを知って、少しは安心します。いつだってアメリカの言いなり、対米追随外交で定評のある日本ですが、少しは気骨のある人もいるということなのでしょう。
 ブッシュはその願望に反し、アメリカ史上最低の大統領として適しに名を残しかけている。ブッシュ大統領は、偉大な大統領という個人的目的達成のためには手段を選ばない。その結果、彼我に多大の死傷者を出し、しかも平然としている。イラクにおけるアメリカ兵の死者は9.11の死者を上まわり、3000人を超えてしまいました。
 この傲慢な自己中心主義者とその側近は、平和に対する罪に加え、通例の戦争犯罪、人道に対する罪の下でも、その責任が厳しく問われて然るべきである。
 公の場に出てくるたびにスター気取りで新しく豪華なスーツを着用しているライス国務長官は、その背後にある優越感と傲慢をまず除去する必要がある。ライスは、メイドか付き人のようにブッシュに忠実な非白人である。
 西暦2世紀に書かれた、「ローマ皇帝伝」において、傲岸不遜なカエサルは暗殺されて当然だと断じられている。ローマ皇帝にしろ、独裁者にしろ、テロリストにしろ、また自由・民主主義を標榜する「皇帝的」大統領にしろ、その傲慢に起因する背徳性、違法性、自己中心主義のために、結果的に、無辜の民を大量に死に追いやる為政者は万死に値する。ブッシュ大統領は、ビンラディンやサダム・フセインと同罪である。
 うむむ、胸のすくような判決です。
 ブッシュは、裕福で甘い両親の下、無理が通る環境で育ったためか、自己中心主義的で、わがままな幼児性を大人の世界にまで持ち込んだ感がある。長じて、それは傲慢となったように思われる。
 アメリカは今、人も物も、電話による会話も、ことごとく国家の監視下に置くことによって、テロの国内への浸透を食い止めることに、とりあえず成功している。しかし、将来に向けて成功し続ける保証はどこにもない。テロは極度に予知しがたい。テロの根源を除去すべきであるのに、現状は蚊が発生する汚水を清掃することなく、そこから発生する蚊を一匹一匹たたき殺すか、都市全体に蚊帳を張りめぐらしているようなものである。まずなすべきことは、反米テロが発生する汚水を清掃すること。汚水とは、アメリカの傲慢である。
 よくぞここまで言ったと思われるほど、ブッシュ大統領を明快に裁いた本です。日本人は、一刻も早く目が覚めるべきだと私はつくづく思います。

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