弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年1月11日

ジャングル

著者:藤田一咲、出版社:光村推古書院

 マレーシア・ボルネオ島の熱帯雨林をとった写真集です。
 ボルネオ島のオランウータンが絶滅の危機に瀕しているというニュースに接して悲しくなりました。人間が食うために森林を伐採しているのです。ところが、そこでも日本の力が及んでいます。要するに日本が建築資材で熱帯の木材を大量に買い付けるからです。アマゾンのジャングルが減っている原因のひとつにも日本人があげられています。マックの牛肉を食べ、また大豆をブラジルから大々的に輸入しているため、熱帯雨林が次々に開発されていっているのです。ところが、私たち日本人はまったく自覚に乏しいのが現実です。おバカな番組をテレビで見て笑いころげるだけではいけないと思うのですが・・・。
 さすがプロのカメラマンだけあって、すばらしい出来栄えのジャングルの写真が満載です。ジャングルの夜明けは紅く染まって目を覚ますのです。
 ジャングルと熱帯雨林は、学術的には区別されているものだそうです。知りませんでした。同じもののカタカナと漢字の違いだとばかり思っていました。
 ジャングルには地球上のどこよりも鳥たちがいる。しかし、ジャングルで鳥たちの姿を見るのは簡単ではない。鳥たちは密生した葉の陰に溶け込むように、じっとしていることが多いから。
 ジャングルでは花々が咲き乱れていると思っていると、実際に花に出会うのは難しい。ジャングルの中は光が少ないので、花を咲かすような植物は生長できない。ジャングルでは、花は日光のあたる、木の上のほうに咲いていて、見上げても、なかなか見ることができない。
 ジャングルを訪れるとは、虫の王国を旅すること。虫をさけて通ることも、無視することもできない。虫がいなくなったら、植物は死に、ジャングルどころか、ぼくたち人間も姿を消すことになる。世界はつながっているのだ。
 ジャングルでは雨が毎日のように、よく降る。バケツの水をひっくり返したように一気に激しく降る。それは土の中の養分を洗い流してしまう。だから、その土から効率よく養分を吸収し、大きな体を支えるために、ヒダのような根を四方に張り出した木は多い。木にとってジャングルで生き抜いていくのは楽ではない。
 夜のジャングルは、にぎやかだ。コオロギの仲間たちによる通奏低音に、金属的な音の独奏を重ねる虫がいる。そこにカエルたちの歌とコーラスをそえるオペラ仕立ての一大コンサートが毎晩開かれる。雨が降ると、カエルたちの鳴き声はいよいよ盛り上がる。
 他の生きものたちは、この音楽をバックに眠りにつくか、食うか、食われるかあるいは求愛している。それは楽しげだが、血なまぐさい残酷な舞台、現実の生活の一部だ。1億年もの長い間のよき観客であるジャングルで輝く月や星々は、そのくり返しをずっと見つめてきた。だが、明日もそれが見れる保証は、今のジャングルにはない。
 ジャングルの美しさが巨視的に、微視的にとらえられています。目の保養になりました。
でも、私はヘビに噛まれたくありませんので、ジャングルに足を踏み入れる勇気はありません。

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