弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年1月 5日

過労自殺と企業の責任

社会

著者:川人 博、出版社:旬報社
 オリックスの宮内義彦はなんでも規制緩和して、民間の自由競争にまかせろと強引に政治をひっぱってきた。そのオリックスで過労自殺が相次いでいる現実がある。法令違反と違法なサービス残業が横行している。宮内義彦がすすめている「ホワイトカラーエグゼンプション」は、残業代不払いを合法化しようとするものだ。サービス残業のおかげで、過労自殺をふみ台にして業績を上げている大企業の経営者が「改革」を唱えている。そこには、自社のもうけがすべて。企業の社会的責任など、カケラもない。あー、いやだ、いやですよね。こんな会長の下で働くなんて・・・。それにしても宮内義彦って、いつもエラそうなことを言うんですよね。まったく厚かましいにもほどがあります。自分の会社の従業員も大切にしないで、社会に向かってエラそうな口きくなと叫びたいです。
 ノイローゼなんていうのは、精神的に甘えている。
 これは、疲労困憊の極みにあった労働者が、しばらく休みたいと恐る恐る申し出たときの上司の言葉だそうです。たまりませんね。その労働者はまもなく自死しました。
 最近、自殺という言葉はやめようと提唱されています。
 長時間労働による睡眠不足が精神疾患発症に関連があることは疑いない。とくに長時間残業が100時間をこえると、それ以外の長時間残業よりも、精神疾患発症が早まる。つまり、長時間残業による睡眠不足は、うつ病発症の原因になるのです。
 おまえは会社をクイモノにしている。給料泥棒!
 存在が目障りだ。いるだけで、みんなが迷惑している。お前のカミさんの気がしれん。
 お願いだから消えてくれ。
 職場で上司からこんなことを言われたら、いったいどうしたらいいでしょう。これはまさしく精神的な暴力と言ってよいでしょう。
 仕事が不快なものであれば、それだけ多く支払われるべきだというのは、ほとんどの人の正義感になかった原則。しかし、現実は明らかにその逆。本質的に、もっとも面白い仕事をしている人たちこそが、高い給料を得ている。もっとも楽しい仕事をしている幸運な人々は、高い給料をもらっているだけでなく、その給料はさらに高くなっていく傾向にあり、そして、それは当然のことだと彼ら自身がますます自信をもって主張するようになっている。
 なるほど、そうなんですよね。実際に・・・。
 この本では、家族(夫や子ども)が悲劇的な死を迎えたとき、その家族も強いストレスを受けて、健康を害して早死にすることがあることも指摘されています。
 ポストベンション、つまり発生したあとの対策が大切だということです。
 著者は私と同世代の弁護士です。経団連で講演したこともあるそうです。前のトヨタ出身の経団連会長は企業利潤一辺倒だったようですが、今度のキャノン出身の会長も同じかどうか注目していると書かれています。いまの大企業にどれだけ期待できるのか、かなり疑問はありますが、前途有為な青壮年が次々に過労で倒れていくのは日本特有の現象だけに、一刻も早くなくしたいものです。

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