弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年1月 5日

ブルー・ローズ

社会

著者:馳 星周、出版社:中央公論新社
 すさまじいバイオレンス・ノヴェルです。年の暮れはともかく、正月に、のんびりした気分で読む本としては、とてもおすすめできません。なにしろ、次から次へと人が殺されていくのですから・・・。実に凄惨です。背徳の官能と、帯にうたわれています。たしかに怪しげなエロスがしきりに漂うのですが、少なくとも私の好みではないエロスなのです。
 話は、公安警察と刑事警察の対立を軸として展開していきます。
 国松警察庁長官の狙撃事件で公安警察が何度も重大なミスを犯して、結局のところ、犯人逮捕にこぎつけることができませんでした。これによる公安警察の威信低下はひどいものです。最近、街頭ビラ配布での強引な逮捕が相次いでいるのは、そんな公安警察による失地回復だという指摘がなされています。公安って、本当にひどいことをするものですね。罪なき人を罪に陥れるのが公安の得意技です。やっぱり、どうしても刑事警察に肩入れしたくなります。あなたも、この本を読むと、そんな気についなってしまいますよ。
 ブルー・ローズというのは、青色のバラの花のことです。赤いバラはあっても、青いバラはできないことになっています。黒いチューリップと同じです。もっとも、チューリップにも黒に近いものがありますし、バラにも青に近いのが最近出来たと思いますが・・・。
 わたしが入庁したころの公安警察官という連中は、いけ好かないが腕は立つ者ばかりだった。しかし、昨今の公安警察官は間抜けばかりだ。もっとも、それは刑事警察も変わりはない。警察官のサラリーマン化が進んでいる。かつては堅牢だった警察官のモラルに亀裂が生じている。バブル経済がなにかを変えたのだ。いずれ、世界に誇る検挙率も落ちるだろう。
 日本警察の検挙率は、もうとっくに地に落ちてしまっていると私は思いますけどね。
 この本を読みながら、警察って、そしてキャリア警察官って、いったいどれだけ事件を内々もみ消しているのか、もみ消す力があるのか、ついつい考えこんでしましました。どなたか正直な内情を教えてください。
 あけましておめでとうございます。本年も書評を書き続けます。昨年よんだ本は502冊でした。その7割を紹介していることになります。読めば読むほど、大自然と人間社会の奥の深さに触れるという気がします。日本を外国へ戦争に出かける普通の国にするため、美しいアベ首相ががんばっていますが、負けてなんかおれません。今年も平和憲法を守り続けるために、愉しみながら弁護士活動と執筆を続けていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

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