弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月22日

藤沢周平未刊行初期短編

著者:藤沢周平、出版社:文藝春秋
 藤沢周平が作家としてデビューする前、昭和37年(1962年)から39年(1964年)まで「読切劇場」など。月刊誌に短編時代小説を書いていたのが発掘されました。藤沢周平は36歳、娘が生まれ前妻が死亡するころの小説です。
 そのころの心境を、藤沢周平は知人への手紙に次のように書きました。
 人生には、思いもかけないことがあるものです。予想も出来ないところから不意を衝かれ、徹頭徹尾叩かれて、負けて、まだ呆然とその跡を眺めているところです。・・・
 悲しみに打ちひしがれ、自殺もできない状況のなかで、藤沢周平は執筆活動をすすめていきました。藤沢周平が新人賞を獲得したのは、それから7年後の昭和46年(1971年)春のことです。
 この本で紹介される短編小説は、なるほど同じ作家の手になるものだけあって、登場人物と時代背景の描き方は、やはり藤沢周平の小説という気がします。ただ、なんとなくまだ荒削りの感もしましたが・・・。しっとり感がまだ少し薄い気がします。
 先日、山田洋次監督の映画「武士の一分」を見ました。藤沢周平原作の映画化三部作の完結篇です。江戸時代の藩政治の不合理のなかでも、夫婦愛に生きる下級武士の生きざまがよく描かれていると思いました。涙もろい私などは、ついつい涙腺が閉まらず、困りました。それなりに観客は映画館に入っていましたが、興行的に成功するのかどうか危ぶまれます。みなさんも、ホームシアターではなく、ぜひ映画館に足を運んで、大きなスクリーンで暗いなか、じっくり映像を見入ってくださいね。
 庄内の方言の柔らかさ、優しさもいいですね。福岡弁も悪くはないと思うのですが、胸にゆっくり泌みこんでくるような庄内言葉は、聞く者の胸のうちをほんわかした気分に浸らせてくれます。
 12月半ば、11月に受けた仏検(一級)の結果を知らせるハガキが届きました。もちろん不合格です。問題は得点です。合格基準点98年のところ、69点でした。あと30点も足りません。120点満点で、やっと5割に達したところです。8割以上とらないと合格しないというハードルは、今の私にとってあまりに高いものがあります。
 実は、自己採点では、なんと75点をつけていました。6点もサバを読んでいたわけです。これまでは、1点か2点くらいの差しかなかったのですが、ついつい自分に甘く見てしまったようです。反省、反省と念じてしまいました。
 この12月に58歳になりました。えーっ、そんなに生きてきたの・・・、という感じです。20歳になったのが、ついこのあいだ。弁護士になったのは昨日のように思えるのに、いつのまにやら弁護士生活も32年たちました。大局的な直感はかなり冴えてきたと本人は思っているのですが、具体的な法律条文とその解釈については、ますます心もとない限りです。いつも身近にいる若手弁護士に教えを乞っている有り様です。

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