弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月15日

朝鮮戦争と日本

著者:大沼久夫、出版社:新幹社

 朝鮮戦争に日本がこれほど深く関わっていたとは知りませんでした。
 日本政府は、朝鮮戦争に参戦した「国連軍」という軍隊のための戦争協力費として  183億円も立て替え負担した。1950年の183億円ですから、実に巨額です。
 朝鮮戦争でたたかったアメリカ軍には日系アメリカ人が兵士、通訳、翻訳者として  5000人は参加していた。うち200人あまりが戦死した。その多くはハワイ出身者。
 日本特別掃海隊(1200人の旧海軍軍人が従事)は、掃海艇20隻、巡視船4隻、試航船1隻で編成され、下関から出動して2ヶ月間、国連軍の元山上陸作戦をはじめとして、仁川の海域などでの掃海活動を行って、国連軍の軍事行動の成功に大きく寄与した。掃海活動中にソ連製の機雷に触雷し、1人が死亡、18人が負傷した。
 国連軍が仁川上陸作戦をはじめたとき、日本人のLST20隻も参加している。日本人の乗組員は朝鮮沿岸の隅々の地の利に精通しているので、アメリカ軍に役立った。このLST20隻には、それぞれ50人あまりの日本人船員が乗船していた。この日本人船員の給与は、2万5000〜3万5000円と高額であり、民間給与の4〜5倍した。それは生命の代償でもあった。LSTは日本各地から出動して朝鮮半島の主要な港へ兵士や軍事物資を輸送した。これに従事した日本人船員は少なくとも4〜5000人にのぼる。
 また、仁川基地などで、艦艇の修理・武器輸送・浚渫工事などに1000人以上の日本人労働者が働いていた。
 日本の調達庁は、朝鮮戦争に関連死者を56人としている。
 このように日本人は、アメリカ軍・国連軍を支援して朝鮮戦争に参加していた。ただし、北朝鮮を支持して参戦した中国人民志願軍のなかにも日本人兵士が参加していた。つまり、日本人も、南北双方を支持して朝鮮半島の戦場で戦ったのである。
 うむむ、そうだったんですかー・・・。
 在日の大韓民国居留民団(民団)は義勇軍を募った。高卒以上の学生・青年からなる義勇軍644人が日本から釜山港に向かった。結果として、戦死者59人、行方不明97人、帰国266人、未帰還222人という。朝鮮半島での戦争ですから、在日朝鮮人が南北それぞれを応援して戦ったのは理解できます。
 それにしても、朝鮮戦争はまだ休戦中なんですね。法的には終わっていないということ、だから、まだ未解明の点がたくさんあるという指摘に驚かされました。

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