弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月 8日

超・格差社会アメリカの真実

著者:小林由美、出版社:日経BP社
 アメリカに26年も暮らしてきた著者が、自分の経験と知見をもとに、アメリカとはどういう国なのか、日本がアメリカのような国になっていいのかを根本的に問いかけた本です。
 アメリカの社会は4つの階層に分かれている。特権階級、プロフェッショナル階級、貧困層、落ちこぼれ。
 特権階級は、400世帯しかいない純資産10億ドル(1200億円)以上の超金持ちと5000世帯の純資産1億ドル(120億円)以上の金持ち。
 プロフェッショナル階層は、35万世帯の純資産1000万ドル(12億円)以上の富裕層と純資産200万ドル(2億4000万円)以上で、かつ年間所得20万ドル以上のアッパーミドル層からなる。彼らは、高給を稼ぎ出すための高度な専門的スキルやノウハウ、メンタリティをもっている。
 特権階級とプロフェッショナル階級の上位2階層をあわせた500万世帯、これは総世帯の5%未満となる、に全アメリカの60%の富が集中している。アメリカの総世帯数1億1000万のうち、経済的に安心して暮らしていけるのは、この5%の金持ちたちだけ。
 アメリカは、人類の求める究極の社会なのか。アメリカの本質を理解した人は、ためらうことなく、一言で、ノーというだろう。
 アメリカの人口2億9000万人のうち、16%の4500万人は医療保険をもっていない。大人の5人に一人は医療保険がない。
 減税というのは、ワーキング・クラスからの徴税を大幅に増やし、投資収入で生きるトップクラスの税負担を減らす、というもの。
 アメリカの中産階級は、1970年代以降、アメリカの国力が相対的に低下する過程で、徐々に二分化してきた。メーカーなどで働く中産階級の大半は、貧困層への道をたどっている。
 アメリカ社会の最下層にいるのは、社会から落ちこぼれている層で、貧困ラインにみたない人々。アメリカの人口の25〜30%を占めている。
 著者は日本がアメリカのような国になってはいけないことを強い調子で訴えていますが、まったく同感です。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー