弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月 4日

蝶々は、なぜ菜の葉にとまるのか

著者:稲垣栄洋、出版社:草思社
 ちょうちょう ちょうちょう
 菜の葉にとまれ
 菜の葉にあいたら 桜にとまれ
 桜の花の 花から花へ
 とまれよ 遊べ 遊べよとまれ
 これは文部省唱歌の歌詞。しかし、なぜ菜の花ではなく、菜の葉なのか。このちょうちょうは、モンシロチョウのこと。
 モンシロチョウは実際に菜の葉にとまる。産卵のためである。モンシロチョウの幼虫である青虫は、アブラナ科の植物しか食べることができない。そこで、モンシロチョウは、幼虫が路頭に迷うことのないように、足の先端でアブラナ科から出る物質を確認し、幼虫が食べることのできる植物かどうかを判断する。つまり、産卵しようとするモンシロチョウは、葉っぱを足でさわって確かめながら、アブラナ科の植物を求めて、葉から葉へとひらひらと飛びまわっている。モンシロチョウは、葉の裏に小さな卵を一粒だけ産みつける。
 といっても、この小さな卵はみるみるうちに大きな青虫になってしまいます。私も、キャベツ栽培に挑戦したことがありますから、よく分かります。毎朝、とってもとっても、翌日には大きな青虫が葉の裏にいつもいて、たちまち虫喰い状態になっていました。
 植物は昆虫に対する防御策をとっている。しかし、昆虫も、その毒性物質を分解して無毒化するなどの対策を講じている。ただ、それは万能というわけではない。だから、アブラナ科植物の防御物質を打ち破る術を身につけたモンシロチョウは、菜の葉だけを求めて飛びまわることになる。そうだったんですねー、なーるほど・・・。
 5月5日の菖蒲湯(しょうぶゆ)についての説明があります。
 旧暦の5月5日は、雨の多い田植えの時期。重労働で体は疲れる。気温や湿度の上がるこの時期に田んぼに入ると、虫や菌によって皮膚病にかかる危険がある。そこで抗菌力の強い薬湯に入って皮膚を保護する。ショウブやヨモギには強い抗菌作用がある。
 7月7日には、ほおずきの根を煎じた薬湯を飲む。ホオズキの根には堕胎の薬としての作用がある。7月7日に妊娠していると、もっとも忙しい稲刈りの時期に大きなお腹で動けなくなる。無理に重労働すれば、流産の危険があるばかりか、母体も危ない。そこで、7月7日にホオズキの薬湯を飲み、早いうちに流産させた。昔はどこの農家にもホオズキがあったが、それには実用的な深い意味があった。なーるほど、そうだったんですかー。
 昔の日本にあったモモは、先が尖っていた。桃太郎の絵本に描かれていたとおり。それが明治時代になって、現在のように丸いモモがヨーロッパから入ってきた。
 かつての日本では、花見は、梅の花を見に行っていた。ウメは遣唐使のとき、中国から日本にもちこまれた。万葉集には、ウメを詠んだ歌が 118首。サクラのほうは43首のみ。遣唐使が廃止されると状況は一変した。「古今和歌集」にはサクラの歌がほとんどで、ウメのほうはわずかになった。
 サクラのサは、田の神を意味し、クラは依代(よりしろ)の意味。つまり、サクラとは、田の神が下りてくる木という意味。
 植物にまつわるうんちくたっぷりの面白い本でした。

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