弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年11月30日

他人を見下す若者たち

著者:速水敏彦、出版社:講談社現代新書
 今の子はすぐに怒ると多くの先生たちが言う。それはすべての子どもがすぐに怒るというのではなくて、極端に怒りやすい子どもの数が多くなったということ。
 飛行機のなかで暴言を吐いたり暴れたりする粗暴な迷惑客がこの4年間で5倍にも増えた。子どもだけでなく、大人のほうも同じようです。
 会社では、最近の成果主義の悪影響で、上司や同僚をバカにする社員が増えている。迷惑行為をする人は、周囲の状況、そして社会常識をまったく無視し、自分だけのルールで行動する。そして、それを否定されると、すごく攻撃的になる。
 今の子どもたちは、たとえ内面的に喜びの感情が芽ばえていても、それを抑制している。子どもは言葉や表情で喜びを表現するのを抑制するが、文章には表現しやすいようだ。
 今の子は個人の損得には敏感になったが、社会の損得や他者の損得には共感できず、鈍感になった。日本の若者は、あまり自分に自信をもっていない。
 現代の学生は、クラスなりグループなりを自ら組織することが大の苦手である。リーダー不在なので、まとまって行動することはなく、同じ学科を専攻している者同士でも、一度も会話しないで卒業することも珍しくない。全体のために働くことに対し、煩わしさを露わにする。
 中高年層でうつになる人が多いというが、最近は子どものうつも増えている。うつ状態の子どもは、小さなことですぐに傷つき、めそめそする。そして、気分が沈みがちで、しばしばため息をつく。
 現代の若者は、赤ちゃんのときの誇大自己をそのまま持続させている人が多いように思われる。公の場での発言は、年輩の人のほうが自己批判的、自己卑下的な言動が多く、若くなるにつれて自己肯定的、さらには自己高揚的な言動が多い。
 人間は、本来、常に自分を高く評価していたい動物である。人は自分よりも優れた人物について知りたがっているというよりも、自分よりも劣っている者についての情報を求めたがっている。下方比較の傾向がある。自己高揚欲求は、とくに自尊感情に対する脅威を感じたときに強く働き、その結果として自分よりも下位にある者との比較によって、自分の幸福感を増大させようとする。
 人の自信は、新しい人間関係にある周りの人たちから承認され、賞賛される経験を通じて形成されることが多い。ところが、そんな親密な周りの人たちが少ない社会では、個人の自信も形成されがたい。
 人間は個性化も大切だが、その前に社会化が必要だ。子どもたちに達成感や自己効力感をもたせる環境を設定する必要がある。
 タイトルは刺激的ですが、書かれている内容はしごくもっともなことばかりで、胸に手をあてて私も思いあたるところがいくつもありました。私の子育ても、あれで良かったのかなとつい反省させられてしまいました。といっても、もう遅いのですが・・・。

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