弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年11月22日

逃亡、くそたわけ

著者:絲山秋子、出版社:中央公論新社
 精神病院から若い患者2人が逃亡します。別に恋愛関係にあるわけではない男女のカップルです。開放病棟に入院中でしたから、逃亡するのは簡単でした。
 女性は躁鬱病の患者で、躁状態にあります。2人は男性の車に乗って逃避行の旅に出ます。もちろん、行くあてなんかありません。ただ何となく、九州をぐるっとまわる旅です。
 秋月〜甘木〜大分〜国東半島〜阿蘇。そのうち、どうにも薬が欲しくなり、途中で見つけた精神科にかけこみます。薬をもらって一息つくと、再び旅に出かけるのです。鹿児島の長崎鼻にたどり着きました。九州を縦貫したわけです。九州各地の名所案内を読んでいる気分にさせてくれます。
 2人の若者の微妙な心のゆれを描いている不思議な小説です。福岡の岩本洋一弁護士が、とても面白いから読んでみたらと教えてくれて読みました。
 九州弁をつかっても、実は名古屋弁も少し顔を出しますが、小説はできるんだなと思い知らされました。

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