弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年11月21日

真相、イラク報道とBBC

著者:グレッグ・ダイク、出版社:NHK出版
 イギリスはアメリカのイラク戦争に加担し、今も続けています。そのイギリスのBBCは大量破壊兵器の有無をめぐってブレア政府と対立し、ついにBBCのダイク会長は辞任させられてしまいました。そのダイク前会長が、その内幕を暴露した本です。日本でも、NHKがこれほどの気骨を示してくれたら、私も受信料を払うのですが・・・。
 ダイクは1947年、ロンドン近郊の庶民の町で、保険外交員の子として生まれました。私と同じ団塊世代です。
 仕事以外のことはすべて放り出し、編集室の床の上で寝ないと一人前のプロデューサーとはみなされないという時代が、かつでのテレビの世界にあった。しかし、今や、その考え方はまったく意味がない。ダイクは、休暇をしっかり取るべきだと言い続けた。休暇は家族の問題だから。
 資本が労働を商品のように売ったり買ったりするやり方は、ますます通用しなくなっていた。企業の経営を成功させたいのであれば、企業で働く人々をまともに使わなければならない。現代の資本主義の下では、企業が成功したいと願うなら、そこで必要なのは、熱心な労働者であり、満ち足りた労働者である。もっとも効率的に人間が働くのは、恐怖心によってではなく、物事を決めるプロセスに参加させ、組織が目ざす目標の設定に参加させ、達成をともに祝うことによってである。
 ダイクは2000年1月にBBCの第13代会長に就任した。ダイクはパブリックスクールにもオックスフォードもケンブリッジも通ったことのない初めてのBBC会長だった。しかも、BBC勤務の経験もなかった。
 放送メディアが中心にもつ役割のひとつが、時の政府に対して疑問を投げかけ、いかなる圧力に対しても抵抗に立ちあがるというもの。ダイクは政府がBBCに圧力をかけてこようとすれば、抵抗してたたかうという姿勢を明快にうち出した。
 官庁街で働く人間の多くはイラクに大量破壊兵器があるかのような新聞報道が間違っていることを知っていた。しかし、危機を強調する報道内容を正しいものにしようとはしなかった。ブレア首相の官邸が、そのような新聞の見出しを求めていたから、イラクに大量破壊兵器があることを前提として、「攻撃(終末)まで45分」という大見出しをうっていた。しかし、本当にそれでよいのか。
 ダイクは結局、追放されてしまいました。逆に、大きなウソをついてイギリス国民をだましたブレアは、今もなおイギリス首相であり続けています。本当に不思議な世の中です。
 イラクで日本の航空自衛隊がいま何をしているのか、NHKは60分の特集番組を組んで放映して国民に知らせるべきではないでしょうか。イラク戦争に日本はアメリカ軍と一緒になって加担しているという現実を・・・。日本人はイラク戦争の傍観者ではありえないのです。
 日曜日に仏検(一級)を受けてきました。手元に残してある答案用紙を見ると、なんと一回目に受けたのは1996年でした。それから毎年あきもせず受けてきたのです。我ながら感心します。というのも、一級に合格できるような実力はまるでないことを認めざるをえないからです。1問目の動詞を名詞に換えて文章を書きかえるのは全滅、2問目の最適の動詞を入れるのも全滅。3問目あたりからようやくヒットするのがあり、長文読解になるとまあまあ、書き取りはぐっとよくなる。そんな感じです。やっと6割とれたかなという成績です。でも、さすがにフランス語の文章に怖さはなくなりました。これが長くやってきた取り柄です。

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